究極にやさしい税効果会計その6

税効果会計インデックス

評価性引当額って何?

146回商業簿記では税効果会計に関連して「評価性引当額」の問題が出題されました。

これは市販の1級テキストに記載がありません。(TACのスッキリ、簿記の教科書、合格テキストなどしか調べていませんので、他のテキストは分かりませんが、多分、記載はないでしょう)

よって、ここは出来なくて大丈夫です。多分出来た人は会計士受験生くらいでしょう。

しかし1級の試験委員は、1度出題してみて出来の悪い論点は再度出題するという傾向にありますので、念のためおさえておいた方が良いと思い、簡単に解説してみます。

そもそも繰延税金資産って何?

そもそも繰延税金資産にはどのような意味があるのでしょう?ざっくり言えば「税金の前払いを意味し、将来その分の支出を節約できるお値引きチケット」のような意味があるのです。

大事なのは「将来その分の支出を節約できる金券」ではなく「お値引きチケット」であるという点です。

例えば法人税等が150万円だとします。通常であればこれは現金で支払います。(決算日にいったん未払法人税等にしておいて、2ヶ月以内に現金で払います。)
ここで、繰延税金資産が100万円ならこれを充当して残り50万円だけ現金を支払えばいいわけです。このように考えれば、繰延税金資産はお値引きチケットでもあるし金券という見方もできます。

しかし、仮に繰延税金資産が100万円あったとしても、そもそも法人税等が80万円しかないなら、20万円分は無駄になってしまいます。もし「金券」だったら20万円分キャッシュバックされるはずです。あくまでも「お値引きチケット」なので、20万円分は無駄になってしまうのです。

つまり、繰延税金資産100万円が本当に100万円の価値を持つためには、少なくとも100万円以上の税金を納める予定がないといけないわけです。では、このようなケースで、差額の20万円はどう扱えばいいのでしょうか。これが「評価性引当額」です。B/Sには繰延税金資産80万円を計上し、注記に繰延税金資産100万円、評価性引当額20万円と記載します。

146回の商簿では?

手元にお持ちの方は、ぜひ試験問題をごらんください。

決算整理前残高試算表の繰延税金資産は34,200千円、解消額が900千円(貸倒引当金)、当期発生額が13,215千円(内訳は、貸倒引当金750、商品評価損1,140、減価償却累計額8,325、退職給付引当金3,000)なので、そこから計算した繰延税金資産は、34,200千円−900千円+13,215千円=46,515千円です。

一方、問題文には「当期末において、繰延税金資産の回収可能性を評価した結果、将来の課税所得と相殺可能な将来減算一時差異(将来加算一時差異との相殺前)は 100,000千円と判断された」とあります。

つまり、繰延税金資産には実質的に100,000千円×30%=30,000千円しか税金を減らすパワーがないのです。

よって、評価性引当額は、46,515千円−30,000千円=16,515千円です。

なお、評価性引当額はあくまでも繰延税金資産が本当にそれだけ資産としての価値を持っているかを算定するものです。よって、繰延税金負債は関係ありません。146回の試験ではその他有価証券から繰延税金負債も計上されますが、これは算入しません。

繰延税金資産の回収可能性

先述したとおり、繰延税金資産は税金のお値引きチケットです。

お値引きチケットはいつでも使えるわけではありません。使用上の条件もあれば有効期限もあります。使用条件は、使う時点で、その額を上回る税金を支払う状態にあることです。赤字じゃそもそも税金納めませんからね。このお値引きチケットを使えません。

また、有効期限についてもなかなか難しいです。減価償却のようにいつ繰延税金資産が解消されるのかが判明しているものはいいのですが、貸倒引当金の損金不算入額のようにいつ解消されるか分からないものは、期限の設定が出来ません。(まあ、売掛金とか受取手形などの営業債権は通常翌期ですが、貸付金が懸念債権になったときなど、いつ回収もしくは破産するのかが分かりません)。

こうなると有効期限の設定は、見積もりが入らざるを得ないわけです。

この有効期限の見積もりを設定することをスケジューリングといいます。つまりいつくらいに解消できそうか、その解消したタイミングで、十分税金払うだけ黒字になりそうかってのを検討して、うん、この値引きチケット使えそうだねってなると、資産性があるってことで繰延税金資産に計上します。

ちなみにですが、毎期毎期十分に儲かっていて、必ずや税金は払うだろうって感じの企業は、そんなスケジューリングなんてやりません。どうせ、毎期税金払ってんだからこの値引きチケットは使えるはずだってことで、資産計上します。

これについての細かい規定は次のとおりです。
繰延税金資産の回収可能性に関する判断指針

ここでは3つの判断指針が示されています。

  1. 収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性
  2. タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得
  3. 将来加算一時差異

1は、要するに将来もガッポガッポ儲かる予定なので、しっかり税金払う予定ありますよー、という状態です。よって、繰延税金資産は回収可能性ありですよということです。

2は、収益性がちょっと危なくて課税所得が少なくなる可能性のあるケースです。さきに紹介したとおり、繰延税金資産が100万円で法人税等が80万円なら、20万円分の繰延税金資産が無駄になっちゃいます。こんなとき、もし含み益のある土地や有価証券を持っていて、いつか売ろうと思っているなら、チャンスですよね。今、売るべきです。そうして売却益を込みにして法人税等が100万円になったとしてもどのみち支払う税金はゼロなのです。お得ですよね。こういう含み益のある固定資産なんかを持っていて、繰延税金資産を無駄なく使うために売却計画などがあるなら、回収可能性ありと判断していいですよというルールになっています。この売却計画が「タックス・プランニング」です。

3も、上記2と同様に繰延税金資産が無駄になっちゃいそうな感じなのですが、そのときに繰延税金負債があれば相殺されます。つまり、繰延税金資産単独で見ると回収しきれなくても、繰延税金負債と相殺すれば回収しきれるのなら、回収可能性ありと判断できるということです。

繰越欠損金について

ちなみにですが、この将来の課税を減少させるって意味では、繰越欠損金も同じ効果があります。私、1999年から2015年まで店舗経営とソフト開発会社の経営をしていました。で、余剰金はずっと株や先物取引の投資にまわしていたんです。投資活動はかなり順調だったんですが、リーマンショックで莫大な投資の失敗をしてしまい、そのとき、欠損金が出てしまいました。

で、翌年から2年間は税金納めていないのです。つまり、繰越欠損金は繰延税金資産と同じ効果があるわけです。(まあ、均等割って言って、赤字でもちょっとは税金納めるので税金が完全にゼロってわけではないのですが)

この欠損金は、スケジューリングしやすいです。9年間って決まっているからです。その間に黒字になればいつでも取り崩せます。

あと、余談ですが、将来減算一時差異の”等”は、繰越欠損金のことです。

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