究極にやさしい税効果会計その4

税効果会計インデックス

税効果会計の目的

ここれまでをしっかり読まれた方は、税効果会計が何のため行われるものなのかは理解されたことと思います。若干端折りますが、まあざっくり言えば「税効果会計とは、わけわからんルールで算定された法人税等を会計上の利益にちゃんとあわせるために調整する(繰り延べる)処理」ということです。

会計基準にもこう書かれています。(税効果会計に係る会計基準

第一 税効果会計の目的
 税効果会計は、企業会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上の資産又は負債の額に相違がある場合において、法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金(以下「法人税等」という。)の額を適切に期間配分することにより、法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等を合理的に対応させることを目的とする手続である。

仕訳にすると 繰延税金資産 ×× / 法人税等調整額 ×× です

上記の仕訳は、財務諸表に2つのインパクトを与えます。

1つは損益計算書です。税務上の法人税等を調整して、会計上の法人税に修正すべく法人税等調整額を計上します。もう1つは貸借対照表です。資産の部に前払いした税金分として、繰延税金資産が計上されます。

では、問題です

さて、ここで1つ質問です。

基準は、税効果会計の会計処理の根拠について、損益計算書と貸借対照表のどちらにより重点をおいているのでしょうか。もっと簡単にいえば、P/Lを正しく表示したいから、税効果会計をやっているのでしょうか。それともB/Sを正しく表示したいから、税効果会計をやっているのでしょうか。前者の考え方を「繰延法」、後者の考え方を「資産負債法」といいます。

はい、考えてみましょう。

繰延法と資産負債法

まあ、会計基準には「法人税等の額を適切に期間配分して、当期純利益と法人税等を合理的に対応させる」とあるわけですから、どう考えても損益計算書のためにやっているようにしか見えません。つまり繰延法を会計処理の根拠にしているように思えます

ところが、これが違うのです。
企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」に明確に書かれています。

第88項
税効果会計基準では、税効果会計の方法として資産負債法によることとされ、会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上の資産又は負債の額に差異が生じている場合において、法人税等の額を適切に期間配分することが定められている。

つまり、会計上と税務上では資産・負債の額にズレが生じるから、これを調整しますね、ということです。えぇぇぇ。冒頭の税効果会計に係る会計基準と言ってることが違うじゃーん、とお思いでしょうが、まあそういうことです。税効果会計に係る会計基準は古い(20年前)のでご勘弁ください。見直しをしようかという話も出ています。

繰り返します。税効果会計は、P/Lのためではなくて、B/Sのためにやっているんです。資産負債法なんです。繰延法資産負債法という用語は覚えてください。試験に出る可能性十分あります。

それがどう影響するの?

とはいえ、「繰延法と資産負債法」ってそんなに重要なんでしょうか。

繰延税金資産 ×× / 法人税等調整額 ×× の借方に注目するか貸方に注目するかが異なるだけで、コインの裏表なのでは?と思われる方もいるでしょう。

そうでもないのです。繰延法と資産負債法のどちらを採用するかは、次の2点に影響を与えます。

  1. 例えばその他有価証券などに含み益(含み損)が出ると、P/Lには影響しないけど、B/Sには影響する。この場合、税効果会計は行うの?
  2. 当期までと来期以降で適用される税率が異なる場合がある。この場合、どちらの税率を使うの?

逆に言えば、上記2点が影響しないような問題(第1回から第3回までのブログ記事はあえてそうしています)であれば、別にどちらを採用しても問題ありません。同じ財務諸表になります。しかし、試験では上記2点が絡んだ問題が出されます。だから大事なのです。

繰延法と資産負債法を採用したときの会計処理

繰延法を採用した場合

期末にその他有価証券を時価評価した結果、評価益が出たとしても純資産に直入するだけで、損益計算書には影響を与えませんから、税効果会計を行う必要がありません。

また、もし、当期までと来期以降で適用される税率が異なる場合、当期の損益計算書を調整するために税効果会計を行っているのですから、当期までの税率を採用します。

資産負債法を採用した場合

期末にその他有価証券を時価評価しても損益計算書に影響は与えません。しかし、貸借対照表には影響を与えます。貸借対照表価額が、取得原価から時価になるからです。

その他有価証券の貸借対照表価額は、会計上は時価ですが、税務上は取得原価のままなのです。ここで、ズレが生じます。よって、資産負債法を採用しているなら、税効果会計を行う必要があります。

また、もし、適用される税率も来期以降の税率を採用します。これは、繰延税金資産は将来、損金不算入額が認容されたときに現金の代わりに使える分であるという意味ですから、その点で適用される税率は将来の税率を使うのです。B/S重視ということです。

まとめると

  繰延法 資産負債法
考え方 会計上の収益・費用と税務上の益金・損金に差異があるなら、発生した年度の当該差異に対する税金軽減額(税金負担額)を差異が解消する年度まで繰り延べる。 会計上の資産負債と税務上の資産負債の差異があって、将来この差異が解消されるなら、この一時差異の発生年度にそれに対する繰延税金資産又は繰延税金負債を計上する。
適用税率 期間差異が発生した年度の課税所得に適用された税率 一時差異が解消される将来の年度に適用される税率
その他有価証券評価差額金 税効果を適用しない 税効果を適用する
回収可能性 あまり考慮する必要がない。 一時差異が解消される時点での回収可能性を考慮する必要がある。

 

市販テキストは、この繰延法と資産負債法について、軽く用語の説明はあっても、あまり深く突っ込んだ解説をしていません。そうすると、なぜ、その他有価証券評価差額金に対して、税効果会計を行うのかの根拠を説明できないのです。理論対策として是非、知っておいてください。

なお、ご承知だと思いますが(もういまや2級論点ですね)、その他有価証券を時価評価した結果、100の評価差額が生じた時は次の仕訳を行います。(税率40%)

 その他有価証券 100 / その他有価証券評価差額金 100
 その他有価証券評価差額金 40 / 繰延税金資産 40

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