147回日商簿記1級・詳細解説【会計学編】

第1問 理論問題

(1)これは難しい。出来なくても仕方ないかと。

(2)これは割と簡単だったかと。
 ア:帳簿価額が正味売却価額を下回るかどうかが問題。再調達原価は関係から×。
   だけどちょっと迷うかも。
 イ:そのまんま。減損会計の処理のルールどおり。◯
 ウ:回復の可能性があると認められるときは減損する必要ない。これもテキストに載っているレベル。×
 エ:金利スワップはプラスなら資産、マイナスなら負債っていうのもテキストに載っているレベル。×

(3)ちょっと難しいけど消去法で出来るかと。
 ア:売上割引は収益じゃなくて費用なので明確に×
 イ:まあ、◯だろうなと思いつつ例外あるのかなぁとということで△にしておく
 ウ:資産除去債務の調整額は減価償却費と一緒だよっていうのはテキストに載っているレベル。明確に×
 エ:退職給付でその他の包括利益になるのは差異であって、利息費用じゃない。これも明確に×
   ということで消去法で「イ」が導けるかと。

(4)まあ普通かな。
 ア:まあ、そのまんまだよねってことで、一応◯にしておく。
 イ:社債って償却原価するよね。よって×。
 ウ:売上割戻引当金は負債に書くよね。よって×。
 エ:オペレーティング・リースのリース料は、レンタルと同じで単なる費用。
   未経過リース料なんて注記するわけない。よって×。
   ということで消去法で「ア」が導ける。

(5)これは出来て欲しい。結構簡単。
 ア:自己株式の処分差損をP/Lに載せるとかありえないので明確に×
 イ:ストックオプションを思い出せば、時価じゃないことは分かるはず。よって×
 ウ:株主総会の決議を通れば、その他利益剰余金から資本金に振り替えるのもありなので×。
   ちょっと難しい?
 エ:これは、明確にそのとおり。これは出来るはず。

第2問 税効果会計

各社の解答速報会なんかを見ていると、この問題は簡単だった、取らなければならないといった解説であふれている。まあ確かに同意なんだけど、これ、根本的に税効果会計って「資産負債法」だよってことを理解しているかどうか次第だと思う。

市販テキストの多くは税効果会計を繰延法で解説している。それだけを鵜呑みにしているとちょっと難しかったかもしれない。

繰延法っていうのは、会計上の収益・費用と税務上の益金・損金の額に相違がある場合に、その期間差異について税効果会計を行う方法だ。つまりP/L思考。例えばこの費用は会計上は費用だけど、税務上は費用(損金)として認めてくれない場合、その分に当期の税率を掛けた額を多めに税金払っているので、それを繰延税金資産にしておこうという思考。

これに対して資産負債法っていうのは、会計上の資産・負債の金額と税務上の資産・負債の金額に差異があって、会計上の資産・負債が将来回収(決済)されることで差異が解消される、ということを前提に税効果会計を行う方法だ。つまりB/S思考。繰延税金資産は「資産」である、ということに重点が置かれている。

まあ、普段、税効果会計の問題を解く時は、別にどちらの考え方でも大差ないのだけれど、今回の問題のように当期の実効税率と前期末のそれとが異なるときに問題となってくる。

つまり、繰延法だとP/L思考なので、期首の繰延税金資産に対して、当期分の法人税等調整額を加減して、期末の繰延税金資産を計上する。このとき、法人税等調整額は当期の実効税率を使う。

これが、資産負債法だとそういう考え方はしない。そもそも期末に計上されている繰延税金資産に資産性がないといけない。ここで言う資産性というのは、「その額の分だけのキャッシュ・フローが将来返ってる潜在的な力」があるということ。ということは解消されるときの実効税率を使わないといけない。

このあたり、プロ簿記講座ではたまたま直前の模擬試験で出題した。ただ、計算問題じゃなくて理論問題として出題した。(ちょっと自慢)

繰り返しになるけど、このあたり、市販テキストではかなり軽めにしか書かれていない。独学者はつらかったかもしれない。

問1

Q社の前期末および当期末における貸借対照表に計上される繰延税金資産の金額(純額)を求めなさい。なお、繰延税金資産の回収可能性に疑義はないものとする。

前期末の繰延税金資産

前期末の繰延税金資産:前期末の将来減算一時差異20,000千円×当期の実効税率35%=7,000千円
前期末の繰延税金負債:前期末の将来加算一時差異5,000千円×当期の実効税率35%=1,750千円
求められているのは、純額の繰延税金資産なので、7,000千円−1,750千円=5,250千円

当期末の繰延税金資産

当期末の繰延税金資産:当期末の将来減算一時差異32,000千円×当期末の実効税率30%=9,600千円
当期末の繰延税金負債:当期末の将来加算一時差異7,000千円×当期末の実効税率30%=2,100千円
求められているのは、純額の繰延税金資産なので、9,600千円−2,100千円=7,500千円

問2

Q社の当期の損益計算書(一部)を作成しなさい。

 法人税等

当期における税引前当期純利益を80,000千円計上したということは会計上の費用と収益の差が80,000千円だったということ。一方で、課税所得の計算上、10,000千円の損金不算入があったということは、費用のうち10,000千円は、会計上は費用と思っていたけど、税務上は損金として認めてもらえず、結局90,000千円について税金を掛けますよ、ということ。

当期の実効税率は35%なので納付する税金は、90,000千円×35%=31,500千円

 法人税等調整額

ここで大事なことは、資産負債法による税効果会計では、期末の繰延税金資産(純額)と期首の繰延税金資産(純額)の差額で法人税等調整額を計算するということ。

これ、こういう風に考えると分かりやすいかもしれない。
つまり、貸倒引当金繰入額を計算するにあたって、売上債権が発生するたびに「この分の◯◯%は返ってこないかもしれないから引き当てておこう」という感じで費用計上するかっていうと、そんなことしないよね。まあやってもいいけど。

そうじゃなくて、期末の売上債権のうちいくらくらいが回収出来ない可能性(つまり将来キャッシュフローを失う可能性)があるかという評価にもとづいて、期末の貸倒引当金を計算して、期首の貸倒引当金との差額をとって貸倒引当金繰入額を計算するでしょ?それと同じこと。

テキストに載っているのは、繰延法の説明が主だから、いちいち減価償却費においてこれだけ差があるとか、商品評価損は損金不算入だとかって、その都度、法人税等調整額を求める設例が載っているけど、これが、誤解を生む原因だと思う。

そうじゃない。税効果会計は、資産負債法なので、期末の繰延税金資産(純額)と期首の繰延税金資産(純額)の差額で法人税等調整額を計算するんだ。大切なことだから2回書いたよ。ということで、答えから言うと、

法人税等調整額:当期末繰延税金資産7,500千円−前期末繰延税金資産5,250千円=2,250千円

本問、計算が簡単で舐めて掛かっちゃいそうだけど、税効果会計の計算の意味を正しく理解しているか?という点ではなかなか難しいし、良問だと思う。

第3問 企業結合

これはどうなの?という問題だった。しかし最近良く出るね。試験委員の学者先生、よっぽどこの論点がお好きなようですね。市販の1級テキストには全く載って無かった。それから会計士のテキストも見たけど軽くは載っていたけど、問3の連結F/Sの金額の計算については載ってなかった。

ちなみに、ちょっと余談だけど1級のテキストって商会だけだとだいたい3冊あるでしょ?出版社にもよるけど。
これ、会計士のテキストだと10冊以上あるんだよね。で、企業結合だけでまるまる1冊使ってたりするの。今回の論点は、その会計士テキストにも載ってなかったということ。うーん、誰が出来るんだろうね。

軽く問題を掲載する。

A社とB社は、それぞれa事業とb事業を事業分離して共同新設分割により新設分割設立会社であるC社を設立した。C社が発行した株式のうち3,000株はA社に、2,000株はB社に配分された。設立時のC社株式の時価は@400千円だった。

分割前のa事業の簿価は、諸資産1,500,000千円、諸負債600,000千円で、諸資産の時価は1,600,000千円だった。a事業の時価は1,200,000千円だった。
分割前のb事業の簿価は、諸資産1,330,000千円、諸負債700,000千円で、諸資産の時価は1,380,000千円だった。b事業の時価は800,000千円だった。

問1

A社およびB社の事業分離直後の個別F/SにおけるC株の額を求めなさい。

これ、ソースを見つけるのにちょっと時間掛かった。これだね。この61ページに「共同支配企業の形成と判定された会社分割(吸収分割又は共同新設分割)の会計処理」というのがあって、次のように書かれている。

「共同支配企業の形成にあたり、吸収分割承継会社等(共同支配企業)は、移転された資産及び負債を分割期日の前日における適正な帳簿価額により計上する」(企業結合会計基準 第38 項)(第407 項参照)。[設例19]

つまりポイントは、適正な簿価で計上せよってこと。知ってれば簡単、知らないとどうすればいいの?って感じの問題だね。

簿価なので、

  • A社の個別F/SにおけるC社株式の金額は、諸資産1,500,000千円−諸負債600,000千円=900,000千円。
  • B社の個別F/SにおけるC社株式の金額は、諸資産1,330,000千円−諸負債700,000千円=630,000千円。

問2

C社の設立に関してA社が取得企業と判定される場合、C社の開始貸借対照表を作成しなさい。

これ、考え方として株式移転とほぼ同じ。C社という新設会社を作ったといっても、事実上A社がB社を取得しているのなら、A社の簿価をC社に移して、C社がB社をパーチェス法によって取得したと考えればいい。

するとA社から得たa事業の仕訳は次のように簿価を移すだけでいい。要は持分プーリング法っぽい処理だ。

(借)a事業資産1,500,000 (貸)a事業負債600,000
              (貸)株主資本900,000

一方でB社から得たb事業はパーチェス法で処理する。つまり諸資産は時価評価し、事業時価との差額をのれんにすればよい。ここで、事業時価は問題文に800,000千円とあるからそれを使ってもいいし、取得原価は事業時価と一致しているはずだから、@400千円×2,000株=800,000千円として計算してもよい。

(借)b事業資産1,380,000 (貸)a事業負債700,000
(借)のれん120,000 (貸)株主資本800,000

結局これらの仕訳を合算したものが、C社の開始貸借対照表になる。
ここまでは、知らなくても勘の良い人は出来たかもしれない。

問3

C社がA社とB社の共同支配企業となると判定される場合、A社およびB社の事業分離直後の連結財務諸表において計上されるC社株式の金額を求めなさい。

これは、地獄でしょ。できないよ。ソースを発見してようやく理解出来た。難しい。この資料のP48にある設例19がソースだね。ちなみにこれは適用指針の設例。これによれば、連結修正仕訳は、持分法に準じた処理を行うとある。

これ、どういうことかというと、分割直前はA社がa事業を100%支配していたのだけど、分割後はa事業を移したC社の60%を持分としているのだからa事業の40%を失ったとも言える。じゃあ対価として何を得たかといえば、それはb事業の60%だ。

つまり、a事業の簿価(900,000千円)の40%(360,000千円)を失った代わりに、b事業の時価(800,000千円)の60%(480,000千円)を得たとも言える。つまり差引120,000千円儲かっている。これを持分法に準じて処理するってことは、A社が保有するC株の簿価(問1から900,000千円)に対して120,000千円増やしてあげればいいってこと。

よって、900,000千円+120,000千円=1,020,000千円となる。

同様に、分割直前はB社がb事業を100%支配していたのだけど、分割後はb事業を移したC社の40%を持分としているのだからb事業の60%を失ったとも言える。じゃあ対価として何を得たかといえば、それはa事業の40%だ。

つまり、b事業の簿価(630,000千円)の60%(378,000千円)を失った代わりに、a事業の時価(1,200,000千円)の40%(480,000千円)を得たとも言える。つまり差引102,000千円儲かっている。これを持分法に準じて処理するってことは、B社が保有するC株の簿価(問1から630,000千円)に対して102,000千円増やしてあげればいいってこと。

よって、630,000千円+102,000千円=732,000千円となる。

私も、上記適用指針の設例を読んで、なるほどとなったけど、こんなの本試験でいきなり出たら出来るわけない。こういうのってどうなんだろうね。

まあ、初見では誰も出来ないのでどうせ差がつかない。要するに捨て問。だけど、2回目以降は対策立てて出来る人が結構出てくるので差がついてしまう。今後は要注意だね。

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