やさしいけどそこそこ詳しいリース取引の解説

152回の試験のリース取引できた?

今回の試験(第152回日商簿記1級)では、会計学でリース取引が出題されました。

中途解約、残価保証、前払いといったひねりはなく、比較的ノーマルな問題でした。しかし、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの判別がちゃんとできるか、所有権移転と所有権移転外の判別は出来るか、そして、割引率が2種類登場する場合の取得原価の算定方法を分かっているかなど、リース会計について正確な知識を問う問題でもありました。

今回、このあたりがあやふやで、本番で焦ってしまった方。せっかくです、これを機会にリース取引のルールを覚えましょう。大丈夫です。大して難しくはありません。

まずは確認ミニテスト

まずは、軽く確認テストをやってみましょう。これがしっかり出来ているようなら、大丈夫。この記事読まなくてもOKです。答え間違えちゃった人、あってたけどちょっと自信の無い人は、この機会に是非マスターしてください。

期首に備品を以下の条件でリースした。取得原価と当年度の支払利息を求めなさい。
① リース期間は5年間。
② 年間リース料は10,000円で毎期末に支払う。
③ 所有権移転ファイナンス・リース取引、貸手の購入価額は不明。
④ 借手の見積現金購入価額は41,000円、当社の追加借入利子率は年6%
⑤ 5年間の年金現価係数は、6%のときが4.212、7%のときが4.1である。

解答はこちらをクリック

取得原価41,000円、支払利息2,870円

これだけは知ってほしいリース取引のルール

すごく基本的なところから解説します。とはいえ結構大事です。

オペレーティング・リースとファイナンス・リース

まずはオペレーティング・リースかファイナンス・リースかを判定します。

オペレーティング・リースは、レンタルみたいなものです。借りているだけで、自分のものではありません。そして借り賃を費用として払っているわけです。一方、ファイナンス・リースは、ローンで買っているみたいなものです。ほぼ自分のものです。(所有権はありませんが好き勝手に使えます。)

で、これ、どうやって判別するかというと、次の2つの条件で判定します。これらの条件を両方とも満たせばファイナンス・リース取引、そうじゃなければオペレーティング・リース取引です。

ノンキャンセラブル

リース期間中に途中解約できないこと。もしくは解約出来るけど、残金一括返済をしなければならないなど、事実上、解約不能に近い状態をノンキャンセラブルといいます。

フルペイアウト

基準には「リース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができて」「当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引」と規定されています。ちょっと分かりにくいですよね。

前者は、要するに、まるで自分が所有しているかのように自由自在に使うことが出来る状態、ということです。改造するのも自由です。後者は、ただし故障した時の修理とか維持管理費なども自分で負担しなければならないということです。こういう状態をフルペイアウトといいます。

大事なことは、両方を満たしてはじめて、ファイナンス・リースということです。片方だけではファイナンス・リースにはなりません。

ファイナンス・リースの具体的な判定基準

さて、ノンキャンセラブルかどうかの判定は、リース契約書を見れば一目瞭然です。これはもめることがありません。難しいのはフルペイアウトです。

「実質的に享受」とか「実質的に負担」とか言われても、抽象的すぎて、これじゃあ人によって判断が分かれてしまう可能性があります。そこで、具体的な判定基準が定められています。次の2つです。

現在価値基準

リース料総額の割引現在価値 ≧ 借手の見積現金購入価額×90% ならファイナンス・リース

  • 具体例
    いま現金で買ったら100万円する機械をリースするとします。リース料は毎年1回20万円、6回の後払い、割引率は8%です。このリース料総額の割引現在価値は924,576円です。借手の見積現金購入価額100万円の90%は90万円であり、リース料総額の割引現在価値は924,576円>見積現金購入価額100万円の90% なので、満たしています。
経済的耐用年数基準

解約不能のリース期間 ≧ 経済的耐用年数×75% ならファイナンス・リース

  • 具体例
    解約不能のリース期間が4年、経済的耐用年数が5年だとします。
    解約不能のリース期間4年 ≧ 経済的耐用年数5年×75%=3.75年 なので満たしています。

こちらはどちらかを満たせばOKです。なお、これらの基準は、もともとは現在価値基準での判定が筋だったようです。しかし、実務的に見積現金購入価額の算定が難しく(恣意性も混入しがち)、また割引率の算定も難しいので、より客観的でかつ簡単に判定できる経済的耐用年数が登場したとどこかで読んだ気がします。

所有権移転の判定

ファイナンス・リース取引は、さらに所有権移転と所有権移転外に分けられます。この判定は、次の3つの条件で行います。いずれかを満たすと所有権移転です。

  1. 所有権移転条項付リース
    リース期間が終了したとき(もしくはリース期間の中途で)、リース物件が借手のものになりますよ(所有権が移転しますよ)と契約書に書かれている取引です。
  2. 割安購入選択権付リース
    リース期間が終了したとき(もしくはリース期間の中途で)、ものすごく安い金額で買い取る権利が借手側に与えられているリース取引です。ちなみに、私、以前、写真屋を経営しており現像機をリース契約していました。毎月の支払額25万円(年間300万円)、5年払い(総額1,500万円)でした。で、リース期間終了後、1ヶ月分のリース料(25万円)でこの現像機は私の所有物になるという契約でした。まさに割安購入選択権付リースです。
  3. 特別仕様物件のリース
    リース物件が、借手の使い途に合わせて特別仕様に改造されているケースです。この場合、リースが終わって返還しても、貸手は第三者に再びリースすることが出来ません。このケースは、所有権移転とみなされます。

今回の本試験では、ここまでの知識が問われました。

まず、備品Cのみがオペレーティング・リースで、他はファイナンス・リースです。そして、備品Aは「所有権移転条項付リース」により所有権移転備品Bは上記のどれにも該当しないので所有権移転外備品Dは「特別仕様物件のリース」に該当するため所有権移転でした。

今回は、分類するだけでしたが、今後は理論問題として出題される可能性もありますので、用語と意味を覚えておきましょう。

取得原価の算定の基本

さて、オペレーティング・リースは借りているだけ(賃貸借処理)ですので、有形固定資産としての計上はありません。取得原価もありません。一方、ファイナンス・リースは、ローンで買っているのと同じこと(売買処理)です。よって取得原価を算定しなければいけません。

貸手の購入価額を知っている?

ここで、大事なことは、「貸し手側がいくらでそのリース物件を買ったのかを知っているかどうか」です。知っているなら、その価額(貸手の購入価額)とリース料総額の割引現在価値を比較します。知らないなら、今、自分が現金で買ったとするといくらかその見積額(見積現金購入価額)とリース料総額の割引現在価値を比較します。

で、いずれにしても小さい方が取得原価です(ちょっと例外もあるのですがそれは後述します)。大事なところですから繰り返しますよ。

  • 貸手の購入価額を知っている
    貸手の購入価額 と リース料総額の割引現在価値 の小さい方が取得原価
  • 貸手の購入価額を知らない
    借手の見積現金購入価額 と リース料総額の割引現在価値 の小さい方が取得原価
取得原価算定の覚え方は・・・

ファイナンス・リース取引は、本当は自分が買うべきところを代わりにリース会社に買ってもらったと考えるのです。ですから、リース会社の購入価額が分かればそれを取得原価にしたいわけです。

しかし、リース会社がいくらで買ったかを教えてくれることはまずありません。この場合は仕方ないので、自分で買った場合の見積現金購入価額を使うわけです。ただし、これらはどちらも現時点で現金で買うことを前提にしています。

実際には、数年間に渡ってリース料を支払うわけです。ですから、その現在価値も計算するのです。そしてそれらを比較して小さい方が取得原価です。(小さい方を選ぶのは、2つ選択肢があってわざわざ高い方を選ぶ経営者はいないからです)

例外って何よ

ただし、1つだけ例外があります。それは、「貸手の購入価額を知っていて、かつ所有権移転」のケースです。この場合は、無条件に貸手の購入価額が取得原価になります。

考えてもみてください。普通、リース会社は購入価額を明かしません。なのになぜ借手はその金額を知っているのでしょう。しかも所有権も移転してくるのです。

これは、借手が、ある資産を銀行のローンで買おうとしたけど審査が通らなくて、しょうがなくて銀行の代わりにリース会社を金融機関として使っているのです。だからリース会社がいくらで買ったのか(というか自分で買うところを代わりにお金出してもらっているだけ)を知っているのです。この場合は、この買おうとした金額が取得原価になります。

取得原価の算定の実際

さて、ルールが分かったところで、確認テストの答え合わせです。

期首に備品を以下の条件でリースした。取得原価と当年度の支払利息を求めなさい。
① リース期間は5年間。
② 年間リース料は10,000円で毎期末に支払う。
③ 所有権移転ファイナンス・リース取引、貸手の購入価額は不明。
④ 借手の見積現金購入価額は41,000円、当社の追加借入利子率は年6%
⑤ 5年間の年金現価係数は、6%のときが4.212、7%のときが4.1である。

まずは取得原価を算定しましょう

さて、すでに所有権移転ファイナンス・リース取引ということは明示されており、貸手の購入価額も不明です。ということは、借手の見積現金購入価額 と リース料総額の割引現在価値 の小さい方が取得原価です。

借手の見積現金購入価額は、41,000円であると書かれています。では、リース料総額の割引現在価値を計算してみましょう。当社の追加借入利子率は年6%ですから、10,000円×5年年金現価係数4.212=42,120円です。

よって、借手の見積現金購入価額41,000円 リース料総額の割引現在価値42,120円 より41,000円が取得原価です。

さあ、ここからが間違えやすいのです

では、支払利息はいくらでしょうか?まず期首に次の仕訳をしているというのはいいですよね?

(借)リース資産 41,000 (貸)リース債務 41,000

で、1年経過したわけで、当社の追加借入利子率は年6%なのですから、支払利息は、41,000円×6%=2,460円でしょうか?多分、そのように答えてしまう受験生は少なくとないと思います。これが大きな間違いなのです。答えは、

支払利息:41,000円×7%=2,870円です。

なぜに7%?

はい、ここが大事です。実は、支払利息を算定するための割引率は「当社の追加借入利子率」とは限らないのです。

リース取引は、まず「取得原価」を算定して、次に、リース料総額の割引現在価値が取得原価と一致するような、割引率を算定しそれを使うのです。

本問の場合、まず取得原価が41,000円と決まりました。そして、毎年のリース料は10,000円で5回払いです。ということは、5年年金現価係数が、41,000円÷10,000円=4.1 となるような割引率を適用しないといけないのです。問題文の⑤にありますよね。7%の5年年金現価係数が4.1です。

よって7%が適用すべき利子率なのです。この仕組が分かっていれば、今回の試験で2つ登場した利子率の意味も分かったのではないかと思います。

このあたり、あやふやにしちゃっている受験生も少なくないと思います。今後の試験では、このあたりもちゃんと理解していることを前提とした問題が出題されると思います。しっかりおさえておきましょう。

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やさしいけどそこそこ詳しいリース取引の解説” に対して1件のコメントがあります。

  1. ノナメ より:

    2回目のコメントです。
    簿記1級合格に向けて、プロ簿記の本質講義を何度も読み込んでおります。
    プロ簿記は、受験生が誤解しやすい論点を抽出して、試験合格に必要十分な内容で記事にされているように感じます。というのも簿記の過去問を回していると、この論点はプロ簿記を直前に読めば十分だろうと思うことがしばしばです。大変価値のある記事をいつもありがとうございます!

    ちょっと本記事の内容とはそれるかもしれませんが、質問させてください。
    リース料総額の現在価値の計算で、追加借入利子率のみ与えられている場合、1年ごとに計算して四捨五入する場合と、電卓のGT機能を使って年金現価係数を出して計算して四捨五入する場合では、1円の誤差が出ることがあるんですが、どちらの計算方法でも正解にしてもらえるのでしょうか。
    それとも、
    解答条件に計算の過程で端数が出る場合には、その都度…とあったら、1年ごとの面倒な計算での答えが正解になるのでしょうか。
    具体的には138回リース取引の問題です。
    お忙しいところ恐縮ですが、お教えいただけると幸いです。

    1. pro-boki より:

      >1円の誤差が出ることがあるんですが、どちらの計算方法でも正解にしてもらえるのでしょうか。
      それとも、解答条件に計算の過程で端数が出る場合には、その都度…とあったら、1年ごとの面倒な計算での答えが正解になるのでしょうか。

      わかりません。日商(というか作問した学者)の採点基準は公開されていませんので分かりようがないのです。簿記1級の講師は、みんな、知りたいと思っていると思います。

      本問に関しては、「計算の過程で端数が出る場合は、その都度千円未満を、小数は小数点以下第3位を四捨五入すること」との指示があるため、各スクールともに、1,000÷1.04で四捨五入、1,000÷1.04÷1.04で四捨五入、というように指示通り毎回四捨五入して取得原価を算定し(=4,453)、それにもとづいて解約損などの計算をしていたようです。(TAC、大原、東京CPAの解答をチェックしたところ、すべてそのような計算でした)

      しかし、これが正しいとは限りません。それは日商の言う「その都度」という言葉が、どのような意味を持つのか記されていないためです。まさに、このリース会計における取得原価の算定においては「その都度」の示すタイミングが年々のCFの割引現在価値を計算する都度なのか、将来CFの現在価値を計算した時点を1つの区切りとするのか、が不明瞭なのです。

      プロ簿記の受講生には、この問題に対して、1つの見解を示しています。それは、「記帳のタイミング」を区切りとしましょう、というルールです。

      たとえば、償却原価法で利息法を採用しているときなど、利払日ごとに記帳するわけですからその都度四捨五入して、償却原価を記帳すべきと考えています。

      一方で、リース会計における取得原価の算定は、年々のCFの割引現在価値を記帳することはありません。その総額をもって取得原価として記帳されるわけですから、そこまでのまとまりをもって1つの計算タイミングであると考えます。よって、本来であれば、ノナメさんの書かれている「電卓のGT機能を使って年金現価係数を出して計算して四捨五入する」の方を採用すべき、というのがプロ簿記(というか私)の見解です。

      この端数処理の問題については、会計基準で規定されているわけでもなく、実務でも問題になりません。よって、試験特有のルールなのですから、日商が詳細に具体例などを示すべきと思います。しかし、日商はこのあたりをあやふやにしたままです。(というか、日商は、試験委員の顔色を伺うばかりで、意見するような立場にありません)

      よって、私の立場としては”不明”としか言いようがありませんが、個人的には「電卓のGT機能を使って年金現価係数を出して計算して四捨五入する」が本解であって、各スクールの解答は別解として認められるべきではないかと考えています。

      ちなみに、リース会計の適用指針(会計基準委員会が公表しているもの)の設例はどうなっているのか、見てみたところ、端数処理について特に指示はありませんでしたが、いわゆる「電卓のGT機能を使って年金現価係数を出して計算して四捨五入する」にもとづいた取得原価を採用していました。この点からしても、私の見解の方が正しいのではないかと個人的には考えています。

  2. ノナメ より:

    先生、お返事ありがとうございます。
    「その都度」が示すタイミングについて、「記帳のタイミング」を区切りとするという考え方が大変しっくりきました。確かに、償却原価法は利払い日ごとに仕訳しますが、リース料総額の現在価値の算定はそのときだけですね。それに、本問では年金現価係数等は書かれていませんが、一般的に現在価値は年金現価係数表などで計算するのではないかなと思いました。
    実際本番で小分けして計算すると時間だけかかって、どこかで計算ミスをしてしまう可能性が高くなりそうなので、GT機能を使って計算する方法で挑戦します。
    わかりやすい解説大変参考になりました。

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