第197回全経上級・解説【会計学】

会計学の感想

計算問題が一切なく、すべて理論問題という出題形式が斬新でした。内容もいつもよりは難しかったのではないでしょうか。

日商簿記1級は特にそうですが、全経上級も、会計学という割にはやや計算に偏っているきらいがあります。(日商簿記ほどではありませんが)

その点で本問は「計算の延長で理論もついでに覚えておけばいいや」ではなくて、きちんと理論は理論で勉強しなさいという意図を感じさせるものでした。趣旨には同意します。

しかし、本問の第2問目などは、税理士の財務諸表論対策並の勉強をしていなければ到底歯が立ちません。となると、今後の全経上級に対応していくためには、現状の勉強では足りず、別途、理論対策をしなければなりません。しかし、そのような学習負荷を掛けたところで、果たして報われるのでしょうか。

正直、どうせ埋没問題になってしまうのではないかという懸念があります。また、失礼な物言いではありますが、全経上級のためだけにそこまでする価値があるのか?という点も考えてしまいます。

悩ましいところではあります。

第1問 正誤判定理論問題

いつものパターンでした。定番です。○×正誤問題です。だいたい過去問から6〜7問は類似問題が出題され、それ以外もその場で考えれば何とかなる場合が多いです。

  1. 企業会計原則注解によれば,固定資産のうち残存耐用年数が1年以下になったものも流動資産とせず固定資産に含ませる。
  2. 企業会計原則注解によれば,同種の物品が多数集まって一つの全体を構成し,老朽品の部分的取替を繰り返すことにより全体が維持されるような固定資産については,部分的取替に要する原価を資本的支出として処理する方法を採用することができる。
  3. 賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準によれば,賃貸を目的として保有している不動産については,企業の選択により原価又は当期末の時価で評価し,投資その他の資産の区分に計上するが,原価で評価した場合には時価を注記しなければならない。
  4. 役員賞与に関する会計基準によれば,役員賞与は,役員報酬と同様に職務執行の対価としての性格を持つので,発生した期間の費用として処理する。
  5. 金融商品に関する会計基準によれば,譲渡人が譲渡した金融資産を当該金融資産の満期日以前に買戻す権利又は善務を実質的に有している場合には,金融資産の消滅の認識をしてはならない。
  6. 連結キャッシュ•フロー計算書等の作成基準及び同注解によれば,投資活動によるキャッシュ•フロー及び財務活動によるキャッシュ•フローは,主要な取引ごとにキャッシュ•フローを総額表示しなければならないが,期間が短く,かつ,回転が速い項目にかかるキャッシュ•フローについては,純額で表示することができる。
  7. 税効果会計に係る会計基準によれば,一時差異とは,貸借対照表に計上されている資産及び負債の金額と,課税所得計算上の資産及び負債の金額との差額をいい,将来の課税所得と相殺可能な繰越欠損金等については,一時差異と同様に取り扱う。
  8. 外貨建取引等会計処理基準によれば,外貨建の子会社株式及び関連会社株式については,取得価額を決算時の為替相場により円換算した額を付する。
  9. 企業結合に関する会計基準によれば,消滅会社が取得企業となる場合,存続会社の個別財務諸表では,当該取得企業の資産及び負債を合併直前の適正な帳簿価額により計上する。
  10. 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準によれば,自己株式の取得,処分及び消却に関する付随費用は,損益計算書の営業費用に計上する。
  1. (Aランク)企業会計原則注解16

    これは出来ないといけない。
  2. (Bランク)企業会計原則注解20
    ×:部分的取替に要する原価は収益的支出である。
    出来れば出来てほしい。日商簿記でも出ているし。
  3. (Cランク)賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準8、12、15
    ×:原価で評価し、期末における時価等は注記しなければならない。
    これは難しい。出来なくても仕方ない。
  4. (Aランク)役員賞与に関する会計基準3、9

    これは出来ないといけない。
  5. (Cランク)金融商品に関する会計基準9

    これは難しい。出来なくても仕方ない。ただ勘でもいいので、ほとんど聞いたことがない論点は、たいてい「○」というテクニックは知っておいてほしい。
  6. (Bランク)連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準 第三・二

    少し難しいけど、出来れば出来てほしい。テキストにも載っているし。
  7. (Bランク)税効果会計に係る会計基準 第二・一・2

    テキストなどでも軽くは触れられているところなので、出来てほしい。多分、あまり勉強していない人か、逆にしっかり勉強している人は出来たと思う。中途半端に勉強していると「ん?一時差異のところって期間差異だっけ?」とか「繰越欠損金も入るんだっけ?」とか迷って逆に間違えそう。
  8. (Aランク)外貨建取引等会計処理基準一・2・(1)3
    ×:当該有価証券はヒストリカルレート(取得時の為替相場)で換算する。
    これは基本問題。なお、”換算”を評価とか測定と書くとバツにされる、もしくは減点されると思われる。
  9. (Aランク)企業結合に関する会計基準34

    逆取得のこと。これも基本問題。
  10. (Aランク)自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準14
    ×:自己株式の取得、処分、消却に関する付随費用は営業外費用に計上する。
    これも基本問題。

第2問 企業会計原則注解

不意打ちを食らったような問題でした。税理士の財務諸表論受験生には有利な問題でしょう。日商簿記1級のついでに全経も受験したよっていう方は歯が立たなかったことでしょう。まあ、答えられる必要もありませんが。やってないのですから。

(では、今後、こういった理論問題にも答えられるような準備をすべきかどうかというと、これがまた微妙だと思います。税理士目指しているならいいですけどね。)

企業会計上継続性が問題とされるのは,一つの会計( a )について二つ以上の会計処理の原則又は手続の( b )適用が認められている場合である。
このような場合に,企業が( b )した会計処理の原則及び手続を( c )継続して適用しないときは,同一の会計( a )について異なる( d )額が算出されることになり,財務諸表の( e )を困難ならしめ,この結果,企業の( f )に関する利害関係者の判断を誤らしめることになる。

<中略>

なお,正当な理由によって,会計処理の原則又は手続に重要な変更を加えたときは,これを当該財務諸表に( g )しなければならない。

問1

(a)から(g)の穴埋めです。企業会計原則注解3からの問題でした。対策取ってれば簡単です。しかし注解なんて読んだことないよって人は手が出なかったでしょう。ただ、それでも以下の「難易度が○」のものは、テキストでも出てくるフレーズですので答えてほしいところです。

解答 難易度
(a) 事実
(b) 選択
(c) 毎期 
(d) 利益  ×
(e) 期間比較 ×
(f) 財務内容 ×
(g) 注記 

 

問2 正当な理由による会計処理の原則又は手続の変更の例を1つ挙げなさい。

これは、正直、解答に困りました。いわゆる会計方針の変更ですが、すぐ下の問3に「棚卸資産の評価方法を先入先出法から移動平均法に変更」が書かれていたからです。当初、これを書こうと思っていたのですが、さすがに、問題文の文言を解答にするのはおかしいか?と思い悩みました。

正答な理由による会計方針の変更について、会計基準には2つの記載があります。1つは「会計基準等の改正に伴う会計方針の変更」、もう1つは「企業の事業内容又は企業内外の経営環境の変化に対応するための会計方針の変更」です。

ですから、このあたりと組み合わせて、例えば「会計基準等の変更に伴い、商品の評価方法を後入先出法から平均法に変更した」とか「企業の事業内容又は企業内外の経営環境の変化に対応して、商品の評価方法を先入先出法から平均法に変更した」といった文章作れば点数もらえるのかなと思います。

問3 インフレのもとで、棚卸資産の評価方法を先入先出法から移動平均法に変更した場合,それは正当な理由による変更には当たらないと判断される。判断の根拠を簡潔に述べなさい。

これは難しいんじゃないでしょうか。継続性の原則といえば「利益操作ダメ」と「比較可能性」だけ覚えておけばOKなんです。そこからひねり出す感じですね。

インフレって時の経過とともに価格が上昇することを言うんですね。ということは、後に仕入れた棚卸資産の方が先に仕入れたものよりも価格が高くなります。よって、先入先出法は、後に仕入れたものを期末棚卸資産とするわけですから、これを平均法に変更すると、期末棚卸資産の価額が低くなってしまうわけです。ということは、その分、売上原価が高くなって、結果的に利益が低くなるわけです。

これが、利益の操作にあたると考えられるため、正答な理由には当たらないと判断されるのだと思います。

要するにこれをどう1行でまとめるかですよね。

インフレーションのもとで当該変更を行うと利益操作(利益の減少)につながるため」とでも書いておけばいいのではないでしょうか。

問4 継続性の原則を遵守することが「真実な報告」をすることに貢献する理由を簡潔に説明しなさい。

さきにも書きましたが、継続性の原則といえば「利益操作ダメ」と「比較可能性」なんです。そこから作文ですね。

なお問題文に「会計は絶対的な真実を表現することができない」と書かれているため、これは「だけど、相対的な真実の報告には貢献する」って書いてほしいんだろうなっていうのは推測できます。そこで、次のように作文しました。

継続性の原則を遵守することで、企業の利益操作を防止し、期間利益における比較可能性を確保できるため、相対的な真実の報告に貢献する。

 

第3問 連結財務諸表

問1
支配従属関係を判断する基準として支配力基準と持株基準があるが,それぞれの長所を簡潔に述べなさい。

問2
原則としてすべての子会社を連結の範囲に含めなければならないが,連結財務諸表に関する会計基準には,例外的に連結の範囲から除外される子会社の1つとして,支配が一時的であると認められる企業が示されている。その具体例を1つ挙げなさい。

問3
子会社の業種が親会社と著しく異なっていても,利害関係者の判断を著しく誤らせる恐れのある企業には該当しないと解釈されている。それは有価証券報告書でセグメント情報が開示されているからであるが,製造業を営む親会社が金融子会社を持つケースを例に,この金融子会社を連結の範囲から除外しなくても誤解を招かないために,セグメント情報が果たす役割を簡潔に説明しなさい。

問1 

支配力基準の長所:経営者が特定の会社を意図的に連結の範囲から外すいわゆる連結外しを防げる。
持株基準の長所:子会社か否かの判定に客観性・画一性があり、恣意性が介入しない。

比較的定番論点ですし、テキストでも簡単ではあるものの記載があるはずですから、答えられた方も少なくないでしょう。なお、そもそも従来、持株基準だったのが支配力基準に変更になったのは「連結外し」による利益操作を防止したいからです。これを知っているなら、その点に一言触れたいところです。

問2

正直、何を聞かれているのか分かりませんでした。

「支配が一時的であると認められる企業が示されている。その具体例を1つ挙げなさい」という問題です。「その具体例」の「その」が何を指すかによって回答が異なります。企業を指すなら「具体的な企業名を挙げよ」と読めますし(そんな訳ありませんが)、支配が一時的を指すなら「支配が一時的とはどういうことかその具体例」ということになるのでしょう。まあ、ここは後者であろうと考え、支配が一時的な事例として次のように解答しました。

当期に出資して連結対象としたが、翌期には売却することが決まっている企業

他社の解答速報を見ると、支配が一時的であることの定義を適用指針などからそのまんま抜き出すだけという感じでした。うーん、さすがに、それは試験委員が求めている解答ではないんじゃないでしょうか。試験委員のお気持ちまでは知りませんが。

問3

これも、正直、何を聞かれているのか分かりませんでした。ざっくり言えば「1つにまとめて書くと利害関係者の判断を誤らせるので、分けて書いた。さて、分けて書くことはどんな役割を持っている?」という問題です。はぁ?ですよ。そんなの「利害関係者の判断を誤らせない役割がある」だよね、と。

簿記の問題というより、国語の問題にしか見えません。どう答えればいいものやら、正直、いまだに分かりません。まあ、無難に基準に載ってるセグメント情報の定義でも書いておけばいいんでしょうかね。でも、それってあくまでも定義であって、役割では無いから、問われていないですよね。

第197回全経上級・解説【会計学】” に対して5件のコメントがあります。

  1. 槍男 より:

    先生、ご無沙汰しております。
    会計学の解説待っておりました。

    まさかここまで理論が出るとは思わなくて、一瞬時が止まったのを今でも覚えてます(笑)

    先生の意見をお聞きしたいのですが、
    第3問の問2。【売買目的で保有する企業の株式の取得割合が過半数を超えた】

    第3問の問3。【親会社では製造業の、子会社においては金融業の利益額が算出される為、両者の違いを瞬別できる】

    それぞれこのように答えたのですが配点はくるでしょうか?

    1. pro-boki より:

      >【売買目的で保有する企業の株式の取得割合が過半数を超えた】

      こ、こ、これはすごい。自分で考えたぞって感じがして好感持てます。
      ただ、過半数超えるまで売買目的ってありえないというか、多分、監査法人が認めないんじゃないかなと思います。というか、20%以上になった時点ですでに売買目的ではなくて関連会社株式です。
      まあ、そこは目をつぶるとしても、支配が一時的ということは、過半数を超えたあとの「売却の意図」があるかどうかが大事なのです。そこに触れていないのもちょっと痛いかな。
      まあ、でも、少しだけなら部分点はもらえると思います。

      >【親会社では製造業の、子会社においては金融業の利益額が算出される為、両者の違いを瞬別できる】

      まあ利益額だけではなくてBSにも触れておきたいところですが、いずれにしても、異業種が混在していても、セグメント情報によって、それぞれの収益性などを峻別出来るというくだりは、十分に配点くると思います。
      ただ、誤字脱字が減点要因になるかもしれません、どの程度厳しいのか分かりませんが。(「瞬別」のことね)

  2. 槍男 より:

    お忙しい中、早速の回答ありがとうございます。

    売買目的についてはやはりそうなりますよね(笑)何か捻り出さないと思い必死に考えて、出たのがこれでした。ですが、テキストのみで勉強している独学者にとっては実務では監査で指摘されるというのは貴重な情報でした。日々の学習でもそういった事を意識しながら勉強していきたいと思います。

    セグメントについては瞬別の誤字の事も気になってはいたのですが、BSに触れるというところはまったく考えつきませんでした。

    今後の学習に活かせるよう頑張ります。お忙しい中ありがとうございます。

    1. 槍男 より:

      富久田先生、今晩は。
      まずは、お礼を言わせて下さい。有益な情報を無料で提供して下さりありがとうございました。

      ついに、簿記系資格【全経簿記上級ですが】&税理士試験受験資格を得ることができました。
      簿記の勉強を独学で始め、理解出来ないことが多々ありましたが、先生のサイトを知り簿記の楽しさと解けることの喜びを感じる事ができました。
      私はプロ簿記生ではないですが、私の原点はここだと勝手に思っています(笑)

      コロナの影響で大変だと思いますが、体調に気をつけ、たくさんの受験生を簿記1級合格へと導いてくれる事を心よりお祈りしています。私も次の壁【税理士試験】を突破できるように今まで以上に勉強に励みたいと思います。
      本当にありがとうございました。

    2. pro-boki より:

      おめでとうございます!

      槍男さん、やりましたね。

      次は税理士ですか。いよいよプロの会計人への道へと歩んでいくのですね。陰ながら応援させてもらいますね。がんばってください。

      いま、世界中が新型コロナで大変な状況です。歴史の教科書にのるような自体をリアルタイムで体験しているのだと思います。でも、いつかまた平時は訪れます。そして、また社会活動は正常に動き始めます。

      社会活動がある限り会計は必要です。何年先も何十年先もです。1級の試験も中止する商工会議所が多く出てきました。税理士試験、会計士試験もいまだ不安定な状態です。不安な状況の中、勉強され、苦しく感じている方もいると思います。

      でも、今勉強していることは、必ずあなたの糧となります。努力は報われます。社会活動がある限り会計は必要だからです。踏ん張りどころです。がんばって参りましょう。

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