第170回日商簿記1級合格体験記【高橋 寛明さん】

~時間との戦い~
簿記に初めて触れたのが実は30代に入ってからです。仕事の関係でやむを得ず勉強を始めたのですが、私生活では子どもが生まれたばかり。しかも共働き家庭。勉強時間の確保は想像以上に困難でした。
職場は遠方で、片道60分の車通勤。家に帰れば風呂掃除、食器洗い、洗濯干し。土日は朝から晩まで子どもの相手。気づけば時計の針は22時を指している……そんな毎日の繰り返しでした。
~初受験から挫折まで~
苦労の末に市販のテキストと過去問演習を積み重ね、なんとか簿記2級を取得。ここで気持ちが大きくなり、「どうせなら1級を」と決意します。
そのとき選んだのは“短期合格”をうたう某スクール。多忙な自分には理想的に思え、迷わず申込みました。確かに実績豊富で優れた先生方ではありましたが、私にはどうにも相性が合わなかったのか、講義の論点がまったく腑に落ちない。
それでも「理解できなくても先に進め。テキストを何度も回せ。過去問は12回分を繰り返せ」というスクールの方針に従い、愚直に勉強を継続。本番試験も2度受けましたが、いずれも40点に届かず。手応えも実感もなく、理解が積み上がらないまま。
40代を迎えていたこともあり、「もう無理だ」と心が折れ、完全に簿記から離れてしまいました。
~プロ簿記での学習方法~
心のどこかに燻っていた「やっぱり1級を取りたい」という想いが再び顔を出し、改めて1級挑戦を決意。
そのとき出会ったのが“プロ簿記”です。先生のブログに書かれていた「本質を理解する」という一文に強く惹かれ、もう一度だけ賭けてみようと門を叩いたのでした。
オンデマンドの講義を通して、「まず一つの論点を、納得できるまで丁寧に理解する」ことを徹底。最初は進度が遅く、不安になることもありました。しかし一つ理解できると、その論点が次の論点と自然につながっていく感覚が生まれました。
「あのとき分からなかったのは、こういう仕組みだったのか!」と膝を打つ瞬間が増え、勉強が次第に楽しくなっていきました。
挫折の記憶で固まっていた心が、少しずつ溶けていくような感覚。
“理解する”喜びを知ったことで、簿記1級という大きな山も「登れるかもしれない」と思えるようになったのです。
とはいえ、隙間時間に細々と勉強していくスタイルは変わりません。
通勤や昼休みのわずかな時間、家事の合間。まとまった勉強時間を確保できるわけではなく、段飛ばしで学習が進んだということも決してありませんでした。
ただ一つだけ意識したのは「初級確認テストを愚直に繰り返す」こと。
基礎的な問題を徹底的に反復することで、知識が少しずつ定着していきました。
正直に言えば、直前模試でも結果は50点台。
過去問を解いても正答率はせいぜい7割。どう考えても“合格圏”とは言いがたい状況でした。
「今回で決めるのは無理だろう」
そう思いながらも、これまで積み重ねてきた勉強を無駄にはしたくない一心で、とにかく試験会場へ向かいました。
~試験を終えて~
正直、運にも助けられたと思います。商業簿記では絶望を味わい、商品売買を潔く捨てる判断をした一方で、工業簿記の比較的やさしい出題に救われた。まさに綱渡りの試験でした。
だからこそ、胸を張れるような圧倒的な合格ではありません。ギリギリのラインをなんとか越えたにすぎません。
けれど、敢えて勝因を挙げるなら――“自分なりに一番信じられる勉強法を最後まで貫いたこと”。
それが 初級確認テストの徹底 でした。
派手さはなくても、基礎を繰り返し固めることを愚直に積み重ねたからこそ、最後の最後に答えを導き出せたのだと思います。
簿記を学んで得たものは、知識や資格だけではありません。
限られた時間の中で工夫し、継続し、諦めずに積み重ねていくこと。その力は、これからの人生や仕事の中でも必ず活きると感じています。
最後に、富久田先生をはじめ、スタッフの皆さま、そして掲示板で共に励まし合った仲間の皆さまに、心より感謝申し上げます。
そして、許可も得ずに勝手に勉強を始めた私を受け入れ、さらに寛大に許してくれた妻に、心からの感謝とお詫びを。
