その他有価証券・解法テクニック

その他有価証券

その他有価証券。超頻出論点です。最近は2級の試験範囲にも入ったようです。

みなさん、その他有価証券の会計処理は得意ですか?

1級は上位10%に入らなければならない試験です。そんな試験において「ここって良く出るよね〜」とみなさんが認識している論点を苦手としているとしたら…。合格は遠いですね。ニッチ論点をいくら語れてもメジャー論点落としてちゃ意味がないんです。

5分チャレンジミニテスト(1)

いや、まあ、「得意か?」と言われると、そんなに自信は無いけれど、そこそこ得意じゃないかな、って思っている人。では、次の簡易ミニテストで実力チェックをしてみてください。日商簿記1級129回の類題です。

目安は…5分で完答なら合格圏内。10分で完答なら普通。15分で完答なら遅いけど練習次第で見込みあり。それ以上の時間がかかったり、出来ないとなるとかなりまずい、といった感じです。

問題

次の資料にもとづいて、決算整理後残高試算表を作成しなさい。

  • 決算整理前残高試算表の残高は次のとおりである。

その他有価証券:27,100
その他有価証券評価差額金:840(貸方残)
繰延税金資産:760
繰延税金負債:560

  • 当社の保有している有価証券は次のとおりである。
  取得原価 帳簿価額 決算日時価
A社株式 7,000 8,000 8,400
B社株式 5,400 5,800 5,200
C社株式 7,200 6,300 7,500
D社株式 8,000 7,000 5,000
  • その他有価証券の評価は,部分純資産直入法を適用し,洗替法を採用している。
  • 当期首において評価差額金を振り戻す処理がまだ行われていない。
  • 法定実効税率は40%とする。

答案用紙

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
その他有価証券   評価差額金  
税金資産   税金負債  
評価損   法調  

解答

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
その他有価証券 26,100  評価差額金 1,020 
税金資産 1,280  税金負債 680 
評価損 1,300  法調 520 

 

解説(よくテキストに載っている正統的な解き方)

簿記の基本は仕訳です。前期末の決算整理仕訳と決算振替仕訳、当期首の再振替仕訳、そして当期末の決算整理仕訳をすべて書き起こして集計すれば解答が得られます。まさに王道中の王道。

多くのテキストでは、この仕訳がずらずらと書かれていて、はい集計しておしまいです、みたいな流れで書かれています。いや、本当にみなさん、そんな方法でやっているのですか?まじですか?と疑問に思いながらもとりあえず王道の解き方で解いてみます。

Step.1 前期はどうなっていたか?

(前期)期中のT/B

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
その他有価証券 27,600    

 

(前期末)決算整理仕訳

  借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
A社株式 その他有価証券 1,000 評価差額金 600
      税金負債 400
B社株式 その他有価証券 400 評価差額金 240
      税金負債 160
C社株式 投資有価証券評価損 900 その他有価証券 900
  税金資産 360 法調 360
D社株式 投資有価証券評価損 1,000 その他有価証券 1,000
  税金資産 400 法調 400

 

(前期末)決算整理後のT/B

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
その他有価証券 27,100 評価差額金 840
税金資産 760 税金負債 560
投資有価証券評価損 1,900 法調 760

Step.2 当期首はどうなるか?

(当期・再振替仕訳)期首のT/B

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
その他有価証券 27,100 評価差額金 840
税金資産 760 税金負債 560

 

(当期・再振替仕訳)期首のT/B

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
その他有価証券 27,600 投資有価証券評価損 1,900 
法調 760    

Step.3 当期決算整理後残高試算表

(当期末)決算整理仕訳

  借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
A社株式 その他有価証券 1,400 評価差額金 840
      税金負債 560
B社株式 投資有価証券評価損 200 その他有価証券 200
  税金資産 80 法調 80
C社株式 その他有価証券 300 評価差額金 180
      税金負債 120
D社株式 投資有価証券評価損 3,000 その他有価証券 3,000
  税金資産 1,200 法調 1,200

 

(前期末)決算整理後のT/B

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
その他有価証券 26,100 評価差額金 1,020
税金資産 1,280 税金負債 680
投資有価証券評価損 1,300 法調 520

 

はい!解答のとおりになりました。
しかしですよ。本当に本試験中にこれらの仕訳を書いて集計しているヒマありますかね…。しかもノーミスでですよ。

時短テクニック

本当はプロ簿記講座の中で紹介しているテクニックなんで、ここにおおっぴらにしちゃうのもどうかとも思ったのですが、まあ、これくらいはいいかなと思い、公開します。

Step.1 余計な情報は無視する

問題文に「当期首において評価差額金を振り戻す処理がまだ行われていない」とか、決算整理前残高試算表の価額が書かれていますが、解答するにあたっては使わない情報なので無視します。余計なこと考えるから時間が掛かったり混乱したりするのです。使わない情報は無視。これが大事です。(ちなみに検証や確認には使います)

Step.2 何はともあれ決算日の時価を答案用紙に書き込む

決算整理前の残高がどうだろうが、全部純資産直入法だろうが部分純資産直入法だろうが、とにかく、決算整理後残高試算表におけるその他有価証券の簿価は、決算日の時価なんです。当たり前です。

だったら、真っ先に書くのです。それを。A8,400+B5,200+C7,500+D5,000=26,100ですよね。これだけで1点か2点ゲットです。

Step.3 帳簿価額も一旦無視して差額を計算

続いて、有無を言わせず「決算日の時価」から「取得原価」を引いて差額をとります。帳簿価額とか無視です。

この差額がプラスなら「その他有価証券評価差額金」、マイナスなら「投資有価証券評価損」で処理します。このあたりはいわゆるその他有価証券の通常の処理です。恐れることはありません。本問を例にやってみましょう。

差額がプラスのとき

A社株式とC社株式は、差額がプラスです。(A社は+1,400、C社は+300で合計1,700)
だったら、次の仕訳を切ればいいのです。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
その他有価証券 1,700 評価差額金 1,020
    税金負債 680
差額がマイナスのとき

B社株式とD社株式は、差額がマイナスです。(B社は△200、D社は△3,000で合計3,200)
だったら、次の仕訳を切ればいいのです。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
投資有価証券評価損 3,200 その他有価証券 3,200
繰延税金資産 1,280 法調 1,280

 

PL科目(投資有価証券評価損と法調)以外は、これが解答です。ここまでで、一旦、「評価差額金1,020」と「税金負債680」「税金資産1,280」を答案用紙に記入しましょう。

Step.4 最後に取得原価と帳簿価額を比較する

最後に「取得原価」と「帳簿価額」を比較します。もし、取得原価<帳簿価額なら、何もすることはありません。おしまいです。もし、取得原価>帳簿価額なら、最後にちょっとひと仕事あります。

本問の場合、C社株式とD社株式の差額がマイナスです。(C社は△900、D社は△1,000で合計1,900)
だったら、次の仕訳を切ればいいのです。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
その他有価証券 1,900 投資有価証券評価損 1,900
法調 760 繰延税金資産 760

 

この仕訳の中で大切な勘定科目は、PL科目(投資有価証券評価損と法調)です。BS科目(その他有価証券と繰延税金資産)は無視してください。BS科目はすでに処理が終わっているからです。

投資有価証券評価損に注目しましょう。Step.3では3,200の借方残です。Step.4では1,900の貸方残です。よって、相殺して1,300の借方残を答案用紙に記入します。

続いて法調です。Step.3では1,280の貸方残です。Step.4では760の借方残です。よって、相殺して520の貸方残を答案用紙に記入します。なお、法人税等調整額は、この投資有価証券評価損(1,300)の40%(520)として計算しても構いません。この方がより速いですね。

圧倒的に速いでしょ?

もし本問が「全部純資産直入法」ならどうなるか

この場合は、超簡単です。上記の時短テクニックのStep.4を無視すればいいのです。Step.3まででOKです。しかも「決算日の時価」と「取得原価」の差額がプラスでもマイナスでも関係なく「その他有価証券評価差額金」で処理すればいいのでより簡単です。 

なぜこの方法で計算できてしまうのか

これ、実に当たり前のことなんです。ざっくり言えば「再振替仕訳の有無や前T/Bには関係なく、正しく処理をしていれば、その他有価証券の決算整理前の簿価は取得原価に戻っている」という性質を利用しています。

また、部分純資産直入法を採用していて、かつ、前期末簿価が取得原価を下回っていると、前期末に損失が発生しますが、この損失は当期に持ち込めません。PL科目だから当然です。PL科目は前期に利益剰余金に振り替られてしまいます。一方で、全部純資産直入法を採用していたり、部分純資産直入法でも前期末簿価が取得原価を上回っているなら、その差額は当期に持ち込まれます。純資産直入(BS科目)なので当然です。

で、当期首に再振替仕訳をするわけですが、このとき前期の差額が当期に持ち込まれていれば、相殺消去されて何も無かったことになるわけです。だから何も考えることありません。

ところが、PL科目は前期の損失が当期に持ち込まれていないので、当期に再振替仕訳をすると、その分(損失を取り消しているので収益が発生)が当期に残ります。その調整をしないとまずいのです。それがStep.4です。

まあ、このあたりの理屈は別に知ってても知らなくても試験的には関係ないので、よく分からなければスルーOKです。

 


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その他有価証券・解法テクニック” に対して1件のコメントがあります。

  1. のらいぬ より:

    実効税率について質問です。
    実効税率40%は推定するのでしょうか?

    1. pro-boki より:

      あ、すみません、記載漏れです。ご指摘ありがとうございます。
      最近は40%以外のケースも多いので、この点は注意ですね。

  2. のらいぬ より:

    訂正ありがとうございました。
    他資格受験生ですが、先生の講義は非常に役立ちます。
    ありがとうございます。

  3. ミスター より:

    こんばんは。
    step3までの解法は問題集や過去問をやっていく中で自然に出来るようになったのですがP/L項目が絡むといつも手間取って悩んでました。
    しかし、step4と最後の解説を読んでようやく腹落ちしました。
    こういう時短テクニックは私みたいな独学者は自分で編み出すしかないので本当にありがたいです。

  4. ありす より:

    突然すみません。いつもブログ拝見しています。
    教えていただいている内容とは少し違うのですが、もし宜しければご回答下さい。
    有価証券の通常の評価損の場合は、部分純資産直入法ならば1年基準で投資有価証券評価損か有価証券評価損だと思うのですが、減損となると無条件で投資有価証券評価損になるのでしょうか?テキストを見てよく分からなかったので、お答え頂けるとすごく嬉しいです。
    突然で申し訳ありません、よろしくお願いします。

    1. pro-boki より:

      >有価証券の通常の評価損の場合は、部分純資産直入法ならば1年基準で投資有価証券評価損か有価証券評価損だと思うのですが

      もし勘違いされていたらと思い一応書かせていただきます。1年基準というのはあくまでもB/S上の流動と固定のどちらに計上するかの基準です。○○評価損は、P/L科目ですから1年基準は適用されません。ですので「1年基準で投資有価証券評価損か有価証券評価損だと思う」というのは、前提として整合していません。

      そのうえで、有価証券を流動と固定のどちらに表示するかは、以下のルールによっています。

      1. 売買目的有価証券のはすべて流動資産(表示科目は有価証券)
      2. 満期保有目的債権のうち1年以内に満期をむかえるものは流動資産(表示科目は有価証券)
      3. その他有価証券のうち社債等で1年以内に満期をむかえるものは流動資産(表示科目は有価証券)
      4. 上記1から3以外はすべて固定資産(表示科目は投資有価証券もしくは関係会社株式など)

      ご質問は「部分純資産直入法ならば…」と書かれていますので、その他有価証券を前提にされているのだと思います。その他有価証券の場合は、上記にも書いたとおり「社債であってかつ1年以内に満期をむかえる場合」のみ有価証券(流動資産)となります。それ以外はすべて投資有価証券(固定資産)です。

      ということは、ご質問内容は「社債等であってかつ1年以内に満期をむかえるその他有価証券が減損になった場合、減損分は、有価証券評価損にならずに投資有価証券評価損になるのか?」というご質問となりますが、それでよろしでしょうか?

      正直、かなりレアケースですのでそのような問題を見たことがないので分かりません。そもそもあと数ヶ月で満期を迎える社債の時価が取得原価に比して半額以下になるという状況がどういうものなのか…。破産したってことですかね。だとすると、破産更生債権等と同じような扱いで、固定資産に振り替えるのではないでしょうか。となると、減損分は、投資有価証券評価損として計上するのだと思います。

  5. ありす より:

    ご回答頂き、ありがとうございます。
    ご指摘の通り、一年基準がbsとplで混在していました。ありがとうございます。

    宜しければ詳しく聞きたいのですが、一年基準で決めたbs科目がplにそのまま使われると思うのですが違うんでしょうか?例で挙げるなら、長期保有目的のその有なのでbsは有価証券科目、plも有価証券評価損もしくは有価証券評価益、と理解していました。

    またその有の場合、長期保有などの指示がなくても投資有価証券評価損などの投資有価証券扱いを受けることが多いのですが、基本的に指示が無ければ投資有価証券扱いなんでしょうか?有価証券の基礎問題やヘッジの多くで投資有価証券評価損の勘定科目を見ます。

    あと念のためにご確認したいんですが、有価証券評価損益の勘定科目を多く見ますが、減損や売却時には損、益で別れた勘定科目を見ます。表示科目と違って勘定科目はその辺りの認識は適当なんだろうと思っていますが、この認識で合ってますか?

    長くなって申し訳ありません。お手すきの時にでも、宜しければご回答下さい。
    よろしくお願いします

    1. pro-boki より:

      >一年基準で決めたbs科目がplにそのまま使われると思うのですが違うんでしょうか?

      「有価証券評価損益」と「投資有価証券評価損益」のみ該当するのではないでしょうか。他に該当するものが思いあたらないです。

      例えば長期貸付金に係る利息も短期貸付金に係る利息も同じく「受取利息」勘定を使います。長期借入金と短期借入金も同じですね。「支払利息」勘定です。

      財務諸表の利用目的を考えてみてください。BSは、安全性分析をするにあたって流動と固定の区分が重要です。よって1年基準という考え方が出てくるわけです。一方、PLは収益性分析がメインであり、要は何に基づいて儲けたのか?が知りたいので、それに基づく区分になっています。よって、本業に係る収益・費用なのか、営業外なのか、特別項目なのかと区分するわけです。

      ですから、「一年基準で決めたbs科目がplにそのまま使われる」というのはちょっと違うのではないかと思います。「有価証券評価損益」と「投資有価証券評価損益」がたまたまそうなのであって、それは1年基準というよりは、もととなる有価証券の種類を表示しているだけなのだと思います。例えば関連会社株式で減損による評価損が出た場合「投資有価証券評価損」とも「関連会社株式評価損」とも書きます。1年基準というより、減損が出たもとになる有価証券の種類を明示したいのだと思います。

      >またその有の場合、長期保有などの指示がなくても投資有価証券評価損などの投資有価証券扱いを受けることが多いのですが、基本的に指示が無ければ投資有価証券扱いなんでしょうか?

      おっしゃるとおり厳密には、その他有価証券は「有価証券」になるケースと「投資有価証券」になるケースがあり、分類すべきです。しかし、先にも書いたとおり「有価証券」に分類されるケースが極めて稀なので、そのケースは無視されているのでしょう。試験では指示のない限り「投資有価証券」扱いでよろしいと思います。

      >あと念のためにご確認したいんですが、有価証券評価損益の勘定科目を多く見ますが、減損や売却時には損、益で別れた勘定科目を見ます。表示科目と違って勘定科目はその辺りの認識は適当なんだろうと思っていますが、この認識で合ってますか?

      PLでの表示は、○○損もしくは○○益です。○○損益という表示はしません。PLの構造上、例えば営業外収益には○○益しか入らないからです。一方で、帳簿上(仕訳帳とか総勘定元帳など)は、企業の自由です。通常は、○○損益を使うことが多いと思います。貸借どちらにも使えて便利だからです。ですから、当然ながら決算整理後残高試算表では(これは総勘定元帳の残高を集めたものなので)、○○損益という勘定が登場します。で、財務諸表を作るときに○○損もしくは○○益に直します。

      試験では、答案要求が決算整理後残高試算表なのか、PLなのかによって、微妙に異なりますので注意されてください。

  6. ありす より:

    返信頂きまして、本当にありがとうございます。
    また私用でバタバタしておりましてコメントが遅くなってしまいました、大変失礼しました。

    頂いた返信ですが、理解することが出来ました。教えて頂いたことを念頭において、勉強に励んでいきます。ありがとうございました!

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