なぜ本支店会計は難しいと感じるのか

本支店会計は人気がない
不得意論点は?と聞くと、本支店会計は、まあ、だいたい3位以内には入る。
なぜだろう。個人的には連結なんかより全然簡単だし取り組みやすいと思うのだけど「いえ、連結より嫌いです」という声が少なくない。
「えーそう?だって、本店と支店を足して内部利益消すだけじゃない。資本連結すらないんだよ」といっても「いえ、連結より嫌いです」と言う。
そうですか(´・ω・`)
ちょっと思ったのは、連結会計って考え方自体は難しいけど処理自体はパターン化されている。何をすればいいのかが明確だ。だから取り組みやすいのかもしれない。それに比べて、本支店会計は、処理が簡単とか難しい以前に、そもそも自分が何をしているのかが分かりにくいのかもしれない。だから難しいというより嫌いという感覚なのかな。
そうだとすると、多分原因はこれだ。前回の記事に書いた「簿記一巡」が良く分かっていないせいだ。
心当たりのある人はちょっとお付き合いを。もしかすると目からウロコが落ちるかもしれない。しらんけど。
本支店会計は大きく2つの論点が問われる
本支店会計では大きく2つの論点が問われる。
1つは、合併財務諸表の作成。もう1つは帳簿の締切だ。似ているようで、まるで違う。だから分かりにくいのかもしれない。
合併財務諸表はその名の通り財務諸表だ。1つの企業としての経営成績と財政状態を外部に公表するためのものでありレポートだ。本店と支店の間での貸し借りとか、本店が支店に対して付加した利益なんてものは内輪の話であって外部に公表すべきものでもない。だから全部消去してしまう。これは、あくまでも帳簿外の手続きであり単発のレポートであることを意識してほしい。
一方、帳簿の締切が問われることがある。これは、その名のとおり帳簿上の手続きだ。帳簿は外部に公表するものではない。帳簿は、過去から未来へと連綿とつながっているものであり連続性のあるものだ。そして区切りとして、決算時に利益を算定して帳簿を更新する。
で、ここからがポイントなんだけど、この合併財務諸表と締切をしたあとの本店の帳簿というのは、かなりよく似ている。本質的にはまるで違うものなのだけど、結果的に似てしまっている。そして、似ているだけに混乱しやすいのだろう。
合併財務諸表の作成
合併財務諸表を作るときのコツは「外部からみて本店とか支店とか関係なく1つの企業としてみた時にP/LとB/Sはどうあるべきか」という点だけを考えて、簿記一巡の手続きにとらわれずに、最終的にどのような金額になるべきかを考えることだ。これは連結会計の超簡単バージョンと思えばよい。処理自体もよく似ている。
本店には支店勘定が、支店には本店勘定が設置されている。前者は本店から見た支店への投資勘定で、後者は支店における本店から受けた出資金(資本)のようなものだ。そして、これらは本店と支店を1つの企業としてみれば、相殺消去されるべきものだ。
(ちなみに、この本店勘定と支店勘定を投資と資本という関係性で見れるかどうかは大事なポイントだ。テキストには債権・債務で説明しているものあるが、もちろんそういう側面もあるのだけど原則は投資と資本という関係性で見るべきだ。その方が本質を理解しやすい)
この処理は連結会計でいえば資本連結をしているのと同じことだ。100%支配(非支配株主がいない)でのれんが無い資本連結と思えばいい。
そして、支店売上勘定と本店仕入勘定も内部のやりとりなので相殺消去する。これは連結会計でいえば親子間で売買があったときに、売上高/売上原価という仕訳を切るのと同じことだ。
最後に、支店の在庫に含まれている本店の付加した利益を消去しておしまいだ。これ、連結会計だと、次のような仕訳になる。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | |
| 期首分 | 利益剰余金当期首残高 | XXX | 売上原価 | XXX |
| 期末分 | 売上原価 | XXX | 商品 | XXX |
これが、本支店会計だと、次のような仕訳になる。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | |
| 期首分 | 繰延内部利益 | XXX | 繰延内部利益戻入 | XXX |
| 期末分 | 繰延内部利益控除 | XXX | 繰延内部利益 | XXX |
そして、合併財務諸表で表示するさいは、商品の評価勘定として繰延内部利益を控除した額をB/Sに計上し、売上原価については、繰延内部利益戻入控除を足して、繰延内部利益戻入を引いた額をP/Lに計上すればよい。これ、ちょっと分かりにくいと思うので具体的な数字を使って説明する。
内部利益が期首在庫に100、期末在庫に150あるとして、当期の売上原価が2,000、期末の在庫金額が500だとする。
この場合、合併財務諸表を作成するために行われる仕訳は次のとおりだ。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | |
| 期首分 | 繰延内部利益 | 100 | 繰延内部利益戻入 | 100 |
| 期末分 | 繰延内部利益控除 | 150 | 繰延内部利益 | 150 |
前T/Bには繰延内部利益が100貸方残であるので、上記仕訳を行うと繰延内部利益の残高は150になる。よって、B/Sに計上される商品勘定は、500−150=350だ。一方、P/Lに計上される売上原価は、2,000−100+150=2,050だ。
まあ、このように本店と支店の帳簿にもとづいて、それを合算したうえで、上記の仕訳を行うのが正しい手順なのだけど、これ、実践的にはこんな面倒な手続きを踏まずにもっとシンプルに計算しても構わない。
あえて帳簿は見ないで、単純に外部からみて、期首在庫は正味いくら分あって、期末在庫はいくらで、外からいくら仕入れて、外にいくら売ったのかだけをピックアップして(つまり内部の取引は一切無視して)、そのうえでP/LとB/Sを作ればそれが答えだ。
どのみち、やっていることは財務諸表作成という帳簿外の手続きなのだ。帳簿に何か仕訳をほどこしているわけではない。上記の繰延内部利益を使った仕訳だって財務諸表を作るための帳簿外の手続きにすぎない。これは精算表の上で行われるだけだ。帳簿には一切触れていない。だから、仕訳なんて切らないで最終的に財務諸表がどうなるかを考えて数値だけ出せればOKだ。
本店の帳簿の締切
一方、本店の帳簿の締切というのは、帳簿上の手続きだ。ここで行われたことは、このあと、ずっと帳簿に影響を与える。
当たり前だけど、本店の帳簿を締め切るとき、本店勘定と仕入勘定を相殺消去するようなことはしない。このあたりが分かっていない人が少なくない。
いい?
本店の帳簿上には、支店に対して投資をしたという事実をもってして支店勘定というのを設置している。これを決算整理手続きで消しちゃったりするわけがない。そんなことしたら投資をしたという事実を消すことになるからだ。その瞬間に本支店会計が消滅してしまう。
同じく支店売上勘定と本店仕入勘定の相殺消去もしない。そんなことしたら、本店が支店に売り上げて、支店が本店から仕入れたという事実が消えてしまう。何のために本支店会計やっているのか意味が分からなくなる。
あくまでも、本店における支店への投資は続いているわけだし、支店における本店からの出資という事実は続いているわけで、これはそのままにしておく。
そして、本店は、外部への売上も支店売上も同様に売上として計上する。支店も同じだ。外部からの仕入も本店からの仕入も同様に仕入として計上する。そうすることによって、本店と支店、それぞれ独自の利益が算定できるのだ。
そして、こうして計上された支店の利益は、100%本店のものだ。これは、本店が100%出資して、支店を開設したのだから当然だ。連結会計と全く同じ考え方なので理解しやすいだろう。よって、支店の利益を本店に振り替える仕訳をしなければいけない。
日商簿記でよく出るのは、この支店から振り替えた利益と、本店独自に出した利益を「総合損益勘定」というところに集めて、最後に内部利益を加減して本店の帳簿を締め切るパターンだ。以上の手続きを正確に行うことが肝心だ。
帳簿上の手続きなので最終的な結論さえあえばいいというわけではなくて、そこに至るまでの仕訳を正確に行わなければならない。
これは、簿記一巡がしっかり分かっていないとなかなか理解しがたいだろう。
簿記一巡は簿記3級で学んでいるはずなのだけど、さらっとやって、試験に出ないものだから、理解不十分なまま放置されてしまい1級まで来てしまう人が少なくない。その影響で、ここが不得意という人が少なくないのだと思う。
本支店会計の不得意な人へアドバイス
ざーっと書いてしまったけど、何が言いたいのか分かるだろうか。ちょっとあとで書き直すかもしれない。もっとわかりやすく図解とかした方がいいような気もするので…
いずれにしても、本支店会計が不得意という人は、次の3点を意識して勉強しなおしてみてほしい。
- そもそも簿記一巡の手続きを理解しているか?例えば決算損益振替仕訳と言われて何のことかパッと分かるか?
- 本支店会計で問われているのは「合併財務諸表の作成」と「帳簿の締切」であり、前者は帳簿外の手続き(精算表の上で行われる)で、後者は帳簿上の手続きであるってことが分かっているか?
- 本店が設置している支店勘定と支店が設置している本店勘定は、連結会計でいうところの「投資と資本」に相当することは分かっているか?
以上です。もし分かりにくかったらごめんなさい。あとで見直して書き直すかもしれません。
“なぜ本支店会計は難しいと感じるのか” に対して6件のコメントがあります。
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本質講義の解説のおかげでテキストを読んでもピンとこなかった本支店会計のイメージが少しわかるようになりました。
逐一、仕訳をしていくとややこしくなってくるので、簡便なやり方はできないかと考えました。
①利益を加算していない実質的な金額を算出し、加算後の金額と差し引きして内部利益を算出します。
②期首商品に含まれている内部利益は、前期末から繰り延べられてきた内部利益が今期に実現したと考えて加算し、期末商品や積送された未達商品に含まれている分は、まだ実現していない利益と考え今期の利益から控除すると考えます。
③全体純利益は、本店純利益+支店純利益+期首商品に含まれている内部利益-期末商品等に含まれている内部利益として計算します。
全経上級は日商1級よりも本支店会計の出題可能性が高そうなので、捨ててしまわずに基本的な問題ぐらいは拾えたらと思っています。
お世話になります。本来ならプロ簿記入会して質問するべきでしょうが、今、ケチって止めてます。どうしても聞きたくなりましたので、申し訳ありませんが、ここで質問させてもらいます。
本支店会計で過去問第137回在外支店の問題、貸倒引当金繰入額で
私は、在外支店だから貸倒引当金繰入額は、換算レート期末の100円で正しいはずと判断して
($30-$3)×100+本店の2000-100=4600と思ったのですが、答は$27×期中平均98+2000-100=4546で計算してました。
注4に売上、仕入および諸費用(ただし減価償却費を除く)ならびに繰越商品は、期中平均相場により換算する。とあるもののこれ優先?それともちゃんと換算方法知ってるかという問いかけ?で迷いましたが、答は書いてある通り。
私の答でも点もらえますかね。
因みに、為替差損と当期純利益とその貸倒引当金繰入額の他は全て合ってました。(時間も10分位余ってました。私の力でなくて解法マスターのおかげだと思います)
また、お盆過ぎたころオンデマンドに入会したいと思ってます。
在外支店の換算は、原則法と特例法があります。
原則法は、5791さんが書かれているとおりです。本店と同じ換算をします。BS科目については、非貨幣項目はHR、貨幣項目はCRです。また、PL科目については、減価償却費はHR、貸倒引当金繰入はCR、商品評価損はCR、売上や販売費など日々発生するものはそれぞれ発生時のHRもしくはARです。
ただし。これは、あくまでも原則です。これとは別に在外支店の換算には特例法があります。
特例法は2つあって、1つは、PL科目を一律にARで換算する方法です。
もう1つは、すべてのBS科目をCR換算し、さらにその場合に限り、PL科目もCR換算することができます。
137回の本試験は、この特例法を指示しています。指示がある場合は従わないと不正解とされます。
お忙しいところ、ありがとうございました。
お世話になります。
いつも参考にさせていただいています。
1点質問があり、連絡いたしました。
①内部利益は繰越内部利益戻入、繰越内部利益控除に関係なく期首、期末の商品勘定から控除した金額で売上原価を求めるのでは?
その前提からすると「内部利益が期首在庫に100、期末在庫に150あるとして、当期の売上原価が2,000、期末の在庫金額が500だとする。」の例題で期首の内部利益は+、期末は−するのはなぜでしょうか?
つまり、今回先生が提示してくださった例題と上記(①)の前提が適用される問題の違いが何かと気になりました。
①が適用される問題の例)本支店合併損益計算書 本店は支店に商品を送付する際、仕入原価に毎期10%の利益を加算。
決算整理前残高試算表 (単位、円)
繰越商品 本店5900 支店2800 繰越内部利益 本店160
仕入 本店63000 支店12500
決算整理事項
期末商品棚卸高:本店5700 支店2600(うち1155は本店仕入分)
答案
売上原価
期首商品棚卸高 8540
当期商品仕入高 75500
計 84040
期末商品棚卸高 8195 売上原価は 75845
以上です。お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
>①内部利益は繰越内部利益戻入、繰越内部利益控除に関係なく期首、期末の商品勘定から控除した金額で売上原価を求めるのでは?
これは内部利益の算定の話?それとも売上原価の求め方の話?
あと、前提として合併財務諸表の話ってことでよい?
【書かれていた例題の検証】
例題を検証しました。次のとおりです。
本支店会計の本来の手順は次のとおりです。
1.合併精算表上において、本店と支店の後TBを合算する。
本例の場合だと、
本店は、期首5,900、当期63,000、期末5,700、売上原価63,200
支店は、期首2,800、当期12,500、期末2,600、売上原価12,700 で、
これを単純合算することで、
期首8,700、当期仕入75,500、期末8,300、売上原価75,900 となる。
2.そこに合併整理仕訳を適用する。合併整理仕訳は、本例の場合だと、
繰延内部利益160/繰延内部利益戻入160
繰延内部利益控除105/繰延内部利益105
(この他にも、本店と支店の相殺消去や、本店仕入と支店売上の相殺消去をする)
3.合併PLを作成する。
繰延内部利益戻入の額は、合併PLの売上原価の期首棚卸高の控除項目とし、
(つまり8,700−160=8,540)
繰延内部利益控除は、期末棚卸高の控除項目としてPLを作成する。
(つまり、8,300−105=8,195)
結果、期首8,540、当期仕入75,500、期末8,195、売上原価75,845 となる。
もし、売上原価だけをダイレクトに求めるなら、
75,900-160+105=75,840
これが正しい手順です。
で、本記事では、上記が正しい手順ではあるけど。面倒なので最初っから、支店の期首は2,800−160=2,640、期末は2,600−105=2,495だと考えて、売上原価を求めると早いよって書いています。