第165回日商簿記1級・詳細解説【工業簿記】

全体をとおしての感想

問題に不備がありませんでした。良問でした。

良問ではありますが、少しやさしすぎる感じもしました。ゆっくり解いても30分程度ですからボリューム不足感も否めません。しかし、とにかく指示不足や不備が無い問題でしたから良かったと思います。

出題内容は簿記2級レベルを少し応用した程度の標準原価計算です。満点近くを取られる方も多くいらっしゃると思います。また、答案用紙にすでに金額が記入されている箇所があり、これが、検算に役立つため親切設計でした。

なお、ちょっと厳しい言い方になりますが、本問を難しく感じた(問題の意図が読めなかった)という方は、勉強の仕方そのものを見直す必要があるかもしれません。解き方パターンの暗記学習にはまってしまっている可能性があります。

そういった意味で、本問は、本質理解をしているかどうかを判定することが出来る良問だったと思います。

目安解答時間は30分〜40分、目標得点は25点、最低確保ラインは20点くらいだと思います。

解き方

簿記2級レベルの標準原価計算の問題です。問われているのは、仕掛品勘定の作成と差異分析、損益計算書の作成です。

仕掛品勘定は、原価標準と生産データがあれば作成できます。原価標準はすでに与えられていますから、あとは生産データを作るだけです。

問1 月初仕掛品

#118(加工費進捗度が80%であるためA、Bともに投入済である)

(1)直接材料費
 A:@300円×400個=120,000円(①)
 B:@200円×400個=80,000円(②)

(2)加工費
 直接労務費:@140×400個×80%=44,800円(③)
 製造間接費:@260×400個×80%=83,200円(④)

#119(加工費進捗度が50%であるためAのみ投入済である)

(1)直接材料費
 A:@300円×500個=150,000円(⑤)

(2)加工費
 直接労務費:@140×500個×50%=35,000円
 製造間接費:@260×500個×50%=65,000円

問2 仕掛品勘定

生産データの作成

以下のような生産データを作成することが出来たかどうかが、本問の最大のポイントです。

*1 (#118)400+(#119)500=900
*2 (#118)400+(#119)0=400
*3 (#118)400×80%+(#119)500×50%=570
*4 (#118〜#122)400+500+200+350+650=2,100
*5 (#123)550
*6 (#123)0
*7 (#123)550×40%=220

*8〜*10 貸借差額より

生産データは、上記のように月初仕掛品と完成品、月末仕掛品を先に算定し、当月投入を差額で算定するとスムーズに作成できます。当月投入を直接求めにいく手順はミスが誘発されやすいので注意しましょう。

仕掛品勘定の作成

最初に答案用紙に記入済みである月初仕掛品の金額(578,000円)を検証しましょう。

月初仕掛品原価

A @300円×900個+B @200円×400個+加 @400円×570個=578,000円
答案用紙の金額と一致する。

当月投入

直接材料費:A @300円×1,750個+B @200円×1,700個=865,000円
直接労務費:
@140円×1,750個=245,000円
製造間接費:
@260円×1,750個=455,000円

完成品原価

@900円×2,100個=1,890,000円

月末仕掛品原価

A @300円×550個+加 @400円×220個=253,000円

問3 差異分析

直接材料費消費数量差異

本問は、購入原料価格差異を把握しているため材料消費価格差異は把握されません。よって消費数量差異のみを把握します。

A:@150円×(標準1,750個×2kg-実際3,580kg)=△12,000円
B:@80円×(標準1,700個×2.5m2-実際4,010m2)=+19,200円
差異合計:+7,200円(貸方)

直接労務費差異

賃率差異:@1,400円×179時間-258,200円=△7,600円(借方)
時間差異:@1,400円×(標準1,750個×0.1時間-実際179時間)=△5,600円(借方)

製造間接費差異

標準時間:標準1,750個×0.1時間=175時間
実際時間:問題文より179時間
基準時間:問題文より2,208時間÷12ヶ月=184時間
変動費率:2,649,600円÷2,208時間=@1,200円
固定費率:3,091,200円÷2,208時間=@1,400円
予算許容額:@1,200円×実際179+@1,400円×基準184=472,400円
予算差異:予算472,400円-実際464,000円=+8,400円(貸方)
能率差異:(標準175−実際179)×配賦率@2,600円=△10,400円(借方)
操業度差異:(実際179−基準184)×固定費率@1,400=△7,000円(借方)

問4 損益計算書の作成

売上高

#117:@1,420円×450個=639,000円
#118:@1,450円×400個=580,000円
#119:@1,520円×500個=760,000円
#120:@1,600円×200個=320,000円
#121:@1,580円×350個=553,000円
合計:2,852,000円

当月製品製造原価

仕掛品勘定の完成品原価と同じなので1,890,000円

月末製品棚卸高

#122:原価標準@900円×650個=585,000円

なお、答案用紙に月初製品棚卸高405,000円と標準原価差異15,000円が記入済であるため、これを検証することで、これまでの計算が間違えていないかを確認できます。

月初製品棚卸高:原価標準@900円×450個=405,000円
標準原価差異:問3の差異の合計△15,000円

問5 理論問題

① 購入原料価格差異は購買部門の責任ということである。

②・③ 購入原料価格差異
 原料A:@150円×5,500kg-@230円×3,100kg+@210円×2,400kg=△392,000円
 原料B:(@80円-@85円)×5,150m2=△25,750円
 合計:△417,750円(借方)

④ 購入原料価格差異は、当期消費高期末有高に配賦する。(原価計算基準第47項)