第159回日商簿記1級・詳細解説【会計学】

第1問 理論問題
- 迷ったり悩むような箇所はなく、明確にウを選択できる。落としてはだめ。
- セグメント情報については、対策してきていない受験生がほとんどのはずなので難しかったと思う。よってウとエは対象外として、アとイのうち明確に正解があるかどうかを読むしかない。ぱっと読んで明確なのはイが×であること。するとアが正解かどうかを判断することとなるが、これが微妙である。「取得関連費用」は個別上でも費用処理することがある。その内容次第である。「付随費用」は取得原価に算入するためこれを「取得関連費用」と呼ぶならアは正解である。結果的にウとエが×なので消去法的にアが正解なのだが、浅く勉強してきた人は正解するけど深く勉強しすぎた人が間違える可能性のある問題になっていたと思う。
- 標準的な受験生なら、アとイは明確に間違えていて、ウは多分あっているだろうと判断つくはずなので、仮に包括利益を勉強してなくてエの判断に迷ったとしても大丈夫だろう。もちろん、包括利益=その他の包括利益+当期純利益で、その他有価証券を売却するとその他の包括利益が当期純利益に移るだけ(組替調整)なので包括利益は変化しない、というきちんと仕組みを知っている受験生にとっては簡単だったと思う。
- 税理士の財表勉強している人にとっては簡単だけど、1級だけ勉強している人にとっては少々つらいか。CF計算書は、金商法で作成を要請されていて(つまりざっくりだけど、上場していないような企業は作る必要がない)、会社法上は作らなくてもいいんだよ、という話を覚えているかどうか次第だと思う。
難易度
適度な難易度だと思う。合格のためには、最低でも2問は取らないとだめ。できれば3問取りたい。
第2問 計算問題
問1 研究開発費とソフトウェア
X1年度:ソフトウェア制作費60,000のうち12,000を(ア)研究開発費として費用処理。(残額48,000)
X2年度:
販売数量基準:48,000×1,500÷3,200=22,500
残存期間で均等按分:48,000÷3=16,000
以上より、22,500>16,000より、ソフトウェア償却費は(ウ)22,500(残額25,500)
X3年度:
販売数量基準:25,500×400÷1,200=8,500
残存期間で均等按分:25,500÷2=12,750
以上より、8,500<12,750より、ソフトウェア償却費は12,750であり、未償却残高は、22,500−12,750=(エ)12,750である。
問2 分配可能額と剰余金の配当
分配可能額
剰余金の額:その他資本剰余金30,000+繰越利益剰余金289,000=319,000
のれん等調整額:540,000÷2=270,000
資本金等の額:資本金200,000+資本準備金30,000+利益準備金15,000=245,000
のれん等調整額270,000>資本金等の額245,000 より、超過している25,000を剰余金の額から控除する。
よって、分配可能額:319,000−25,000=294,000
剰余金の配当
| その他資本剰余金 | 21,250 | 未払配当金 | 20,000 |
| 資本準備金 | 1,250* | ||
| 繰越利益剰余金 | 63,750 | 未払配当金 | 60,000 |
| 利益準備金 | 3,750 |
*資本準備金の積立について
準備金積立上限までの余力:資本金200,000÷4−資本準備金30,000−利益準備金15,000=5,000
資本準備金の積立額:5,000×20,000÷(20,000+60,000)=1,250
分配後の資本準備金:30,000+1,250=31,250
分配後の繰越利益剰余金:289,000−63,750=225,250
問3 共同新設分割
Q社にとっては、今までq事業の100%を支配していたのに、それを手放して代わりにR社を手に入れた状態。ところがR社の中身は、p事業とq事業であり、Q社はR社の70%を支配している(つまりp事業とq事業のそれぞれの70%を支配している)わけだから、結果的にq事業の30%を手放して(今まで100%支配していたのが70%の支配に減ったので)、その代わりにp事業の70%を手に入れたといえる。
ここまで読んで、あ、これって事業分離による逆取得とまったく同じ考え方じゃないか!と気づいた人は出来たと思う。何言ってるんだかさっぱり、という人にとっては厳しかったと思う。
ただ、これ、初出ではなく147回にも出題されている(なお、147回の商簿は在外支店の本支店会計であり、当時と同じ作問者かもしれない)論点で、まるで同じ問題だから部分点くらいは取りたい所でもある。
逆取得は、だいたい、個別上の金額と連結上の金額が問われる。
プロ簿記では、直前に「逆取得なら個別上は簿価」で覚えちゃっていい、部分点取れるから、と言って来たんだけどどうだったかな。出来ているといいんだけど。
あと、逆取得の連結上が問われたら、超簡単な解き方があって、プロ簿記の講義では頭使わずに機械的に解く方法を紹介している。一応式だけ書いておく。
- のれん:(p事業の価値120,000−p事業の識別可能資産負債時価110,000)×0.7=7,000
- 資本剰余金:(q事業の時価280,000−q事業の簿価200,000)×0.3=24,000
- 非株持分:(q事業の簿価200,000+識別可能資産負債時価110,000)×0.3=93,000
本問はのれんと非株持分しか聞かれていないけど、上記3つはどれが聞かれてもおかしくない。逆取得は常に上記の解き方で解けるので知ってると瞬殺できる。ただ、1級ではオーバースペックな気がしないでもない(本来は会計士論点)だけど、これだけ頻繁に出題されるのだから対応しておいたほうがいいと思う。
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問3なんですが、共同支配企業だと147回同様に持分法の適用にはならないですか?
147回は「連結上のC社株式」が問われています。
159回(今回)は「個別上のR社株式」が問われています。
連結上では持分法適用ですが、個別上では簿価です。
いつも勉強させて頂いております。
基本的なことかもしれませんが1点質問させて下さい。
第2問の問1なのですが、X2年度の償却費を計算する際、X2年度期末時点の見込販売数量の変更は考慮していないと思います。(確かに手持ちのテキストでもそのようになっていました。試験中はそれに自信がなくて間違えました・・・。)
これが例えば工事進行基準における工事原価総額の変更や、ストックオプション-株式報酬費用の計算時の失効見積数の変更では、計算対象の期末の見積変更を加味して計算していると思うのですが、この差には理屈がつくものでしょうか?
>この差には理屈がつくものでしょうか?
つくと思います。
減価償却は、この1年間の収益に対応する費用として、どのように計算するのが適正か?という”PL”の観点(費用収益対応の原則の観点)から見積りを行っているのだと思います。ですから、この1年間に稼働すると見込まれた操業度(やソフトウェアの場合販売数量)を分母にして、分子を実績にするのです。
ストックオプションには、費用収益を対応させるという概念はなく、期末時点における新株予約権の額はいくらと考えるのが適切かという”BS”の観点から見積りを行っているのだと思います。よって「期末時点での時価×ストックオプション数」にもとづいて計算するのだと思います。株式報酬費用は、期首と期末の差額から結果的に算定されるものです。
(なお、期末時点での時価は、1級の問題では変化しない場合が多いですが、変化することもあります。また、ストックオプション数とは、付与数からその時点で予定された失効数を控除した数です。)
つまり、PL重視か、BS重視かです。この観点の相違が計算方法の相違にあらわれているのだと思います。あくまでも私の見解にすぎませんが。
非常に参考になりました。
今後同様の処理に出会ったときにはこの基準で考えてみます。
早々の御回答、ありがとうございました。
お散歩です。
わざわざご返信していただいて大変恐縮です。
そうですね。P社については『個別』と明示してあるのでそれで良いのですが、q社に関しては連結と前提してありながらも共同支配とは明示されていないので、持分法でもって資本剰余を持分に加増するのか、しないものか、いずれにしろそれは回答に求められてはいないわけですから関係はありませんね。だだ、先生が解説において『共同支配企業』とタイトルされていたので、であればq社の修正仕訳に資本剰余金は出てこないのでは、と思った次第です。たぶん、問題の前提は置いといて、ありがちなバターンの『解法』をスバっと示されていたのだとは思っています。もう少し優しく、暖簾が10000万円で非支配株主持分が96000円になっても間違いではないと解説していただけていたら嬉しかったです。ではでは。
これは…なんというか…びっくりした。
富久田先生はじめまして
プロ簿記生ではありませんが一言先生にお礼が言いたくコメントいたしました
プロ簿記のお陰で先日の簿記1級一発で合格出来ました
点数は商業18,会計18,工簿22.原価21でした
独学で勉強を始めて半年間で運良く合格出来たのも先生とプロ簿記のお陰です
退職給付会計のワークシート、連結会計の解き方、各種ミニテストが特にありがたかったです
また先生が度々サイトに書かれる基礎を固めることの大切さも本当にその通りだなと感じております
最近は先生がお勧めされていた”会計のことが面白いほどわかる本”、”財務会計講義”を買いこれは理解に役立つなと思いとても楽しく読んでおります
繰り返しになりますが素晴らしいサイトを本当にありがとうございました