非累加法を基礎から学ぼう(その2)

非累加法の記事その2です。その1はこちら

非累加法を基礎から学ぼう(その1)

非累加法には、大きく2つの計算方式があります。1つは、前編で紹介した「累加法と計算結果が一致する方法」、もう1つをこちらで紹介します。

ここで紹介する計算方式は、日商簿記1級では30年間出題がありません。試験だけを考えるならスルーしても問題ありません。なお、全経上級では出題実績がありますが、稀ですし、配点も少ないので重要性は低いです。

ただし、考え方を知っておくことは悪いことではありませんし、日商簿記1級の現試験委員の特徴のある出題傾向(数十年ぶりに出題することがある)を考えれば、やっておいて損のない論点です。

工程別総合原価計算(非累加法)・通常の計算方式

前編では、第2工程において「第1工程で投入された材料と第1工程加工費を足して前工程費として処理」すれば累加法だし、「足さずに2つの要素のまま処理」すれば非累加法なんだ、という話をしました。忘れてしまった方は、復習しておきましょう。

この前編で紹介した非累加法のことを「改正計算方式」とか「累加法と計算結果が一致する計算方式」といいます。日商簿記では後者の言い回しが使われますので覚えておいてください。

さて、この累加法と計算結果が一致する計算方式は、工程ごとに計算処理を行なっています。第1工程で投入した材料費、第1工程の加工費、第2工程の加工費という3つの要素をばらばらに処理するとともに、第1工程と第2工程それぞれで原価計算を行っているわけです。まあ、工程別総合原価計算なので当たり前といえば当たり前なのですが。

この計算方式のメリットは、工程ごとの完成品原価や月末仕掛品原価が分かるだけではなく、予定消費価格や工程間の振替価格を使っている場合は、工程ごとに発生した差異を測定できる点にあります。

しかしです。

特段、工程ごとの責任会計を行う気がないのであれば、別に工程ごとに分けて計算する必要はないわけです。計算の手間が掛かるばかりです。

第1工程責任者、第2工程責任者というそれぞれの工程責任者の視点ではなく、工場全体を見ている工場長の視点からは「結局、当月は何をどれだけインプットして、どれだけアウトプットを得たんだ?」ということが分かればよく、かつ、なるべく計算の手間を減らしたいという局面もあるのです。

それに応えた計算方式が、これから紹介する非累加法です。なお、この計算方式のことを「通常の計算方式」と言っていますが、特に正式名称があるわけではありません。

問題

以下の資料にもとづき完成品単位原価を求めなさい。第1工程完了品は全量第2工程の始点に振り替えている。また、原価配分方法は先入先出法を採用し、累加法(通常の計算方式)によって計算する。

生産データ

 第1工程:月初200(50%)、当月1,300、月末400(50%)、完成1,100
 第2工程:月初200(50%)、当月1,100、月末300(50%)、完成1,000

原価データ
  第1工程 第2工程
月初仕掛品 直接材料費
(前工程費)
①1,000,000 1,200,000
内訳
直接材料費 ②1,000,000
第1工程加工費 ③200,000
加工費 ④100,000 ⑤200,000
当月投入 直接材料費
(前工程費)
⑥6,857,500
加工費 ⑦1,332,000 ⑧1,995,000
合計 9,289,500

解答

仕掛品勘定
月初仕掛品
材 200+200
第1加工 100+200
第2加工 100

第2工程完成品
材・第1加・第2加 1,000

 

当月投入
材 1,300
第1加工 1,200
第2加工 1,050
月末仕掛品
材 400+300
第1加工 200+300
第2加工 150

材料費単価:⑥6,857,500÷1,300=@5,275
第1工程加工費単価:⑦1,332,000÷1,200=@1,110
第2工程加工費単価:⑧1,995,000÷1,050=@1,900

月末仕掛品原価(材料費):@5,275×700=3,692,500
月末仕掛品原価(第1加工費):@1,110×500=555,000
月末仕掛品原価(第2加工費):@1,900×150=285,000
 合計:4,532,500

完成品原価(材料費):
 ①1,000,000+②1,000,000+⑥6,857,500−3,692,500=5,165,000
完成品原価(第1加工費):
 ③200,000+④100,000+⑦1,332,000−555,000=1,077,000
完成品原価(第2加工費):
 ⑤200,000+⑧1,995,000−285,000=1,910,000
合計:8,152,000

完成品単位原価:8,152,000÷1,000=@8,152

非累加法の解説

考え方

これは、生産データを作れるかどうかが勝負です。それさえ作れてしまえば簡単です。単なる単純総合原価計算ですから。

上記生産データをご覧ください。1つしかボックスがありませんよね。第1工程とか第2工程に分かれていません。ここがポイントです。

工場長の視点で考えるのです。

月初に各原価要素(材料費、第1工程加工費、第2工程加工費)の在庫はどれくらいあって、当月、各原価要素をどれだけインプットしたら、結果、何がどれだけアウトプットされたのか。それだけを考えて生産データを作るのです。

生産データの作り方

まず、月初に材料はどれだけあったでしょうか。第1工程に200個ありますよね。それだけでしょうか。第2工程にも第1工程完了品の在庫が200個あります。ですから、材料だけに注目すれば、200個+200個=400個あるわけです。

続いて、月初仕掛品に第1工程加工費はどれくらい含まれているのでしょうか。まず、第1工程に50%ほど加工をほどこした在庫が200個ありますから、完成品換算量に換算して100個です。さらに、第2工程には第1工程完了品の在庫が200個あります。この第1工程完了品200個は第1工程の加工が100%施されていますから、その完成品換算量は200個です。よって、第1工程加工費だけに注目すれば、完成品換算量で、100個+200個=300個あるわけです。

最後に、月初仕掛品に第2工程加工費はどれくらい含まれているのでしょうか。まず、第1工程にある在庫には第2工程加工費は一切含まれていません。当たり前です。続いて、第2工程には第1工程完了品の在庫が200個あります。この第1工程完了品200個は第2工程の加工が50%施されていますから、その完成品換算量は100個です。

以上、月初仕掛品に含まれている各原価要素の量(完成品換算量)とその金額を計算しました。同様に、月末仕掛品に含まれている各原価要素の量(完成品換算量)を算定します。また、完成品は1,000個ですから、貸借差額によって、当月投入量も算定できます。

以上にもとづいて作成したのが、上記の生産データです。

ここまでが大事です。最初は混乱すると思います。やり方さえ分かってしまえば簡単です。2回目以降はすぐ出来るようになります。最初だけでいいので上記説明をゆっくり丁寧に読んで、ご自分で生産データを作ってみてください。

製品原価計算

生産データが出来てしまえば、あとは単に原価要素が3つあるだけの単純総合原価計算です。先入先出法ですから、当月投入の金額と当月投入の量(完成品換算量)にもとづいて各原価要素の単価を算定し、月末仕掛品原価を求めます。最後に、貸借差額から完成品原価を求めればおしまいです。

上記金額計算について、①〜⑧まで原価データに番号を振ってあります。どの原価データの金額をどこで使っているのか注意深くおっていけば簡単に理解出来ると思います。

2つの非累加法を比較してみて

前編では「累加法と計算結果が一致する計算方式」を、この記事では「通常の計算方式」による非累加法を紹介しました。問題の資料は同じ数値を設定を使用しています。では、解答はどれほど異なるのかを比較してみましょう。

  一致する方法
前編
通常の計算方式
(当記事)
材料費 5,180 5,165
第1工程加工費 1,080 1,077
第2工程加工費 1,910 1,910
合計 8,170 8,152

 

どちらが正確なのでしょうか。そりゃあ「累加法と計算結果が一致する計算方式」です。きちんと工程別に計算しているわけですから。つまり、ものの流れと計算の流れが一致しているので正確なのです。

一方で、通常の計算方式は、ものの流れは工程ごとに流れているのに、計算ではそれを無視している(1つの生産データにまとめてしまっている)ので、不正確です。ただし生産データが1個しかないので計算量が少ないという利点があります。

もし、仕損・減損があると

仕損・減損があろうとなかろうと「累加法と計算結果が一致する計算方式」を使っている分には特に問題は起きません。

問題なのは「通常の計算方式」です。何が問題かというと、まあ度外視法を採用するか非度外視法を採用するかにもよるのですが、負担責任の無い月末仕掛品にも正常仕損費などを負担させてしまう可能性があるということです。

例えば、度外視法を採用していて、第2工程で仕損があったとしましょう。いくら度外視法を採用しているといっても、第2工程で仕損があったのなら第1工程月末仕掛品には何ら仕損費を背負う責任はありません。しかし、「通常の計算方式」はこういった工程という概念を無視して1つの生産データにして計算していますので、負担義務の無い第1工程月末仕掛品にまでも仕損費を負担させることになってしまいます。

よって、計算は不正確になります。

原価配分方法で平均法を使うと

さらに、最悪なのが、原価配分方法に平均法を採用している場合です。

平均法は、月初仕掛品と当月投入の単価を同一のものとみなす計算方法です。加重平均を取って単価を1つにしてしまうわけですよね。

ということは「通常の計算方式」によれば、第1工程と第2工程の月初仕掛品に含まれている材料と当月投入材料のすべての金額を使って平均単価を算定するわけです。

で、この金額を使って、月末仕掛品原価や完成品原価を計算します。

さて、月末仕掛品の材料は、正確にいえば第1工程の月末仕掛品に含まれる材料と、第2工程の月末仕掛品に含まれる材料があります。どちらも平均単価を使って計算します。

いや、さすがに、これはおかしいだろうと。なぜかって。第1工程の月末仕掛品に含まれる材料費を計算するときの消費単価って、第1工程月初仕掛品と第2工程月初仕掛品と当月投入の材料費の平均単価なんですよ。

ものの流れというか、時間的な前後関係がおかしいだろ、ってことです。なぜに第1工程の月末仕掛品の金額計算で、第2工程の金額が出てくるのかって話ですよ。

つまり、もう、理論的にハチャメチャなんです。この計算。

通常の計算方式のまとめ

ということで、この通常の計算方式というのは、計算の手間を惜しんだばかりに、計算の精度は悪くなるし、仕損・減損が出ると負担義務の無い月末仕掛品に負担させることになるし、平均法を使った場合には時間軸まで曲がるというとんでもない計算方式なんです。

しかも、試験にも出ない(全経でちょろっと出ます)。

実務でも使われていない。

ということで、こりゃあ捨てですね。(ここまで書いておいて…)

そもそも非累加法って必要なの?

おお、急に核心に迫る質問。

そもそも、非累加法は、前編にも書いたとおり、原価管理を目的にしているわけです。つまり、単に完成品原価や完成品単価がいくら、というだけではなくて、それを構成する原価要素(材料費や工程ごとの加工費)を明らかにすることで、期間比較によって原価管理を行おうってことが目的なんです。

でもですよ。

原価管理といえば、とっても適した計算方法ありましたよね。

そうです。標準原価計算です。

標準原価計算を使えば、非累加法で得られる情報はすべて得られるのですよ。というか、それ以上の情報が得られます。つまり、標準原価計算を使うなら、非累加法はいらないのです。

なんとまあ。

じゃあ、非累加法の存在意義ってどこにあるの?という話になりますが、正直あまりないんです。だからこそ試験にも出ないし、実務でも使われていないのです。

ただし。

標準原価計算って、実務的には導入が大変なんですよ。具体的には、標準消費量を統計的・科学的調査によって測定するのが大変なんです。導入までに半年とか掛かることは普通にあります。しかし、昨今の製品ライフサイクルの速さを考えると、ものによっては半年とか1年でモデルチェンジしちゃいますよね。やっと標準消費量が分かったころに、もう新製品が出てしまうわけです。

これじゃあ、いつまでたっても標準原価計算を導入できない。だけども、原価管理がしたい!というニッチなニーズに、非累加法は適応しているのです。

ということで、存在意義がゼロってわけじゃないよ、ってことで、非累加法については以上です。

非累加法を基礎から学ぼう(その2)” に対して2件のコメントがあります。

  1. wabisabi より:

    いつもわかりやすい説明ありがとうございます。

    最後に、月初仕掛品に第2工程加工費はどれくらい含まれているのでしょうか。まず、第1工程にある在庫には第2工程加工費は一切含まれていません。当たり前です。続いて、第2工程には第1工程完了品の在庫が200個あります。この第1工程完了品200個は第2工程の加工が50%施されていますから、その完成品換算量は100個です。

    の記載は、「最後に月末仕掛品~」がとなるべきではないでしょうか。

    1. pro-boki より:

      もとの記載であっていると思います。当該部分は月初仕掛品についての解説したものです。

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