第167回日商簿記1級・詳細解説【商業簿記】

商簿

第167回商業簿記の感想

第167回日商簿記1級本試験、受験してきました。

商業簿記は、計算ボリュームは多かったものの奇をてらった問題や変なひねりもなく、解きやすかったのではないかと思います。
設問はどれも良問で、普段の勉強の成果が表れる問題だったと思います。

得点の目安は、目標17〜18点です。傾斜配点はあまり期待できないと思います。

商簿・問題概要

答案要求

個別財務諸表の損益計算書と連結財務諸表の主要項目が問われました。オーソドックスな問題でした。

問題概要
  1. 収益認識基準(カスタマー・ロイヤルティ・プログラム)
  2. 商品売買(売価還元法)
  3. 貸倒引当金
  4. 有形固定資産
    4.1 減価償却費の算定
    4.2 減損会計
  5. 自社利用のソフトウェア
  6. 投資有価証券
  7. 退職給付会計
  8. ストック・オプション
  9. 法人税等
  10. 自己株式
  11. 連結財務諸表の各科目
以下の解説をご覧頂くうえでのお願い
  • 原則として金額の単位が無いものはすべて千円単位です。
  • 誤字脱字などありましたらご連絡ください。

1 収益認識基準(カスタマー・ロイヤルティ・プログラム)

収益認識基準の問題です。

当社は、個人および法人顧客向けに小売業を営んでおり、カスタマー・ロイヤルティ・プログラムの一環として、商品の販売価格に対して 10%のポイント(1ポイント当たり1円)を付している。当該ポイントにつ いては、顧客がこれを使用して無償で商品を購入する割合を 75%と見込んでいる。決算日において、商品 21,500 千円のクレジットカード販売があったが、未処理であった。なお、クレジットカード会社に対する2% の手数料を計上する。

まず、取引価格21,500を「商品販売による履行義務」と「将来のポイント利用に係る履行義務」に、独立販売価格にもとづいて配分します。将来のポイント利用に係る履行義務の独立販売価格は、顧客が使用するであろうと見込まれる割合75%にもとづいて算定されることに注意してください。

独立販売価格
 商品販売:21,500
 ポイント:21,500×10%×75%=1,612.5

取引価格の配分
 商品販売:21,500×21,500÷(21,500+1,612.5)=20,000(売上計上)
 ポイント:21,500×1,612.5÷(21,500+1,612.5)=1,500(契約負債に計上)

また、取引価格21,500について、クレジットカード会社への手数料が430(=21,500×2%)あるため、これをクレジット売掛金勘定から支払手数料勘定に振り替えます。

クレジット売掛金 21,070 売上 20,000
支払手数料 430 契約負債 1,500

 

上記の計算途中で小数点が生じます(ポイントの独立販売価格:1,612.5)。この時点での判断が勝負を分けたと思います。小数点が出ても念の為、最後まで計算してみようという胆力が必要な問題でした。

【解答欄】

  • 売上高:前TB 540,000+20,000=560,000

2 商品売買(売価還元法)

売価還元法の問題です。ひねりの無い素直な問題ですから取りたいところです。解法のポイントは、低価法原価率の算定ができるか?と棚卸減耗損を売上原価に含めるという指示を正確に読めたか?の2点です。

問題文に「収益性の低下を反映した原価率を適用する」とあるので、低価法原価率にもとづいて期末商品棚卸高を算定します。低価法原価率は、原価合計を値下げを無視した売価合計で割って求めます。

値下げを無視した売価合計:70,000+400,000+145,000+10,000=625,000
原価合計:50,000+400,000=450,000
低価法原価率:450,000÷625,000=72%
期末実地棚卸高:実地売価58,000×72%=41,760

問題文に「棚卸減耗損は売上原価に含める」とあることから、売上原価は、原価合計450,000から期末実地棚卸高41,760を控除して求めます。

【解答欄】

  • 売上原価:450,000-41,760=408,240

3 貸倒引当金

一般債権しかない簡単な問題ですが、上記1と絡んでいる点に注意が必要です。解く順番を誤るとミスにつながります。

貸倒引当金設定額:売掛金80,000×1%+クレジット売掛金(64,930+21,070)×0.5%=1,230
貸倒引当金繰入額:1,230-前TB 500=730

【解答欄】

  • 貸倒引当金繰入730

4 有形固定資産

基本的な問題です。丁寧に計算してケアレスミスをしないようにしましょう。特に車両運搬具のような月按分が必要な計算は、下書き用紙に計算式を書いておく習慣をつけておくとケアレスミスをしにくくなります。

減価償却費の算定

建物B:250,000÷20年=12,500
建物C:180,000÷12年=15,000
備品:9,000÷10年=900
車両運搬具:12,000×0.4×9ヶ月÷12ヶ月=3,600
合計:32,000

【解答欄】

  • 減価償却費32,000

減損会計の処理

まず、簿価合計と割引前将来CFを算定して、減損損失を認識するか否かの判定を行います。

 簿価:土地30,000+建物C120,000+備品7,200=157,200 
 割引前将来CF:15,000×8年+30,000=150,000
 判定:簿価157,200>割引前将来CF150,000より、減損を認識する。

続いて、減損損失を測定するため回収可能価額を算定します。回収可能価額は、使用価値と正味売却価額のうちいずれか高い方の金額です。

 使用価値:15,000×5.33493+30,000×0.46651=94,019
 正味売却価額:140,000−6,380=133,620
 回収可能価額:正味売却価額>使用価値より、133,620
 減損損失:簿価157,200−回収可能価額133,620=23,580

最後に、減損損失を土地と建物と備品に配分します。

 土地に係る減損損失:23,580×30,000÷157,200=4,500
 建物に係る減損損失:23,580×120,000÷157,200=18,000
 備品に係る減損損失:23,580×7,200÷157,200=1,080

【解答欄】

  • 使用価値94,019
  • 減損損失:23,580

5 自社利用目的のソフトウェア

前期に支出した21,000と、当期に支出して一般管理費に計上されている4,800について、それぞれソフトウェア償却費を計算します。

前期支出分(前TB 21,000)

前TBの 21,000千円は、20X4年4月1日から20X7年9月30日までの3.5年分に相当します。よって、ソフトウェア償却額は、21,000÷3.5年=6,000です。

当期支出分(一般管理費 4,800)

一般管理費のうち4,800は、自社利用目的のソフトウェアであり、当期の償却額は、4,800×6ヶ月÷36ヶ月=800です。

ソフトウェア償却費 6,000 ソフトウェア 6,000
ソフトウェア 4,800 一般管理費 4,800
ソフトウェア償却費 800 ソフトウェア 800

 

【解答欄】

  • ソフトウェア償却費:6,000+800=6,800
  • 一般管理費:前TB 22,800-4,800=18,000

6 投資有価証券

一見すると複雑な問題ですが、答案要求は損益計算書であるため、投資有価証券売却益だけを算定すれば十分であることに気付けたかどうかがポイントです。

投資有価証券の取得時の単価は@22千円であり、当期中に@24千円で300株売却しています。この点だけに注目すれば解けます。

【解答欄】

  • 投資有価証券売却益:(@24-@22)×300=600

7 退職給付会計

いつもとは異なるパターンでの出題でした。退職給付会計の典型的な出題パターンは、勤務費用や利息費用、数理計算上の差異、一時金や年金の支払い、年金資産への拠出などの資料が与えられて、期末の退職給付引当金や当期の退職給付費用を算定するというものですが、本問は、こういった資料は一切与えられず、退職給付見込額と現価係数のみが与えられました。

実は、これ、退職給付会計の最初に学ぶ内容です。どのテキストにも最初の方に載っています。ですから、いつもの問題よりも易しいと言えるのですが、過去問をひたすら周回させてパターン暗記をしてしまっている人にはむしろ難しく感じられる問題だと思います。良問です。

前期末の退職給付引当金:40,000×0.88797=35,519(前TBと一致することを確認)
当期末の退職給付引当金:50,000×0.90573=45,287

【解答欄】

  • 退職給付費用:45,287−35,519=9,768

8 ストック・オプション

こちらも易しい問題でした。ストック・オプションは条件変更や失効数の見積もりの変更があると若干難しくなるのですが、本問は一切こういった要素はなく、単に期間計算するだけの問題でした。取らなければならない問題です。

前期末の新株予約権:@5.4×20名×100個×9ヶ月÷36ヶ月=2,700(前TBと一致することを確認)
当期末の新株予約権:@5.4×20名×100個×21ヶ月÷36ヶ月=6,300

【解答欄】

  • 株式報酬費用:6,300−2,700=3,600

9 法人税等

問題文に記載の額を答案用紙に書き込むだけです。

【解答欄】

  • 法人税、住民税及び事業税8,000

10 自己株式

自己株式の処分にともなう支払手数料は、自己株式処分差益と相殺してはならず、支払手数料勘定で処理します。また、自己株式処分差益をその他資本剰余金に振り替えます。

自己株式処分差益 370 その他資本剰余金 400
支払手数料 30    

 

【解答欄】

  • 支払手数料:前TB 4,600+カード会社手数料430+30=5,060

11 連結財務諸表の各科目

論点は、基本論点に加えて取得関連費用とアップストリームの2つのみです。2級レベルであり連結会計としては、易しい問題ですが、個別財務諸表の算定が前提となりますので意外と得点しにくい問題だったかもしれません。

のれん、資本剰余金、非支配株主持分の3つは取りたいところです。また、個別財務諸表の収益認識基準と商品売買の処理が出来ていれば、棚卸資産、売上高と売上原価も取れます。

土地は、減損損失の配分計算が必要になりますので、少し取りにくいです。

その他の包括利益は、期末と期首のBSその他有価証券評価差額金の差で算定できることを知っていれば容易だったと思います。ここは今後も出題されると思われる箇所ですから取れなかった方は復習しておきましょう。

利益剰余金は、個別財務諸表の損益計算書がパーフェクトにできていることが前提ですから、取りにくいです。捨ててしまって構いません。

タイムテーブルの作成

  20X2年 20X4年
資本金 30,000 30,000
資本準備金 10,000 10,000
利益剰余金 10,000 12,400
評価差額 3,000 3,000
未実現利益   △900
合計 53,000 54,500
非支配株主持分 10,600 10,900
取得原価 50,000  
のれん 7,600 6,080

 

商品売買における利益率:100%-売上原価126,000÷売上高180,000=30%

棚卸資産:P社 41,760+S社28,000-3,000×利益率30%=68,860
のれん:タイムテーブルより6,080
利益剰余金:
 P社利益剰余金:期首265,000-当期純損失2,178=262,822
 S社取得後剰余金:(12,400-10,000)×持分80%=1,920
 のれん償却額:△760×2=△1,520
 未実現利益消去額:△3,000×利益率30%×持分80%=△720
 取得関連費用:△2,000
 合計:260,502
売上高:P社560,000+S社180,000-85,000=655,000
その他の包括利益
 期首その他有価証券評価差額金:(@20-@22)×100株=△2,000
 期末その他有価証券評価差額金:(@25-@22)×70株=2,100
 その他の包括利益:2,100-△2,000=4,100
土地:P社 前TB 500,000-減損損失配分額4,500+S社25,000+時価評価3,000=523,500
資本剰余金:前TB 資本準備金100,000+その他資本剰余金400=100,400
非支配株主持分:タイムテーブルより10,900
売上原価:P社408,240+S社126,000-85,000+アップストリーム3,000×利益率30%=450,140