第164回日商簿記1級本試験・レビュー【商会編】

本試験お疲れ様でした。私はプロ簿記を始めてから欠かさず本試験を受験してきましたが、遂に今回その記録が途絶えてしまいました。(ギックリ腰になってしまい悶絶していました。歩けないので受験を諦めました)

受験までたどり着くことは立派なことです。受験された方、ぜひ、ご自分をほめてあげてください。結果は二の次です。

ということで、今回は試験会場での受験ではなく、本試験当日の夕方にネット上で公開された試験問題を入手し、解き始めました。

ざっくりですが、講評と傾斜配点などについてレビューしていきます。

商業簿記

全体の印象

  • 印象:良問。実力を測定する意味でも、今後の学習用教材としても良問
  • 難易度:普通
  • ボリューム:普通
  • 目標点数:20点、最低ライン15点くらいかな。
  • 難易度、ボリュームともに普通です。なお、この「普通の問題」を作問することは簡単そうで難しいことです。作問側からすれば受験生のレベルなど考えずに作ることも可能であり、そうすると極端に難しかったり易しかったりと、検定試験に適さない問題となります。本問は難易度はもとよりボリューム感も多すぎず少なすぎずといったところで、実力を反映させやすい良問でした。
  • 傾斜配点:多分あまり傾斜配点はかからないと思います。

個々の論点ごとの印象

1.返品権付き販売

新しい収益認識基準が試験範囲に入ってから、返品権付き販売は繰り返し出題されています。前回(162回)は難易度が高く正答率が低かったものと思われ、今回は、それを踏まえて難易度を多少下げてきています。解きやすい基本問題でありながら、多少のひねりもあって良問でした。

ちなみにここが取れなかった方は、基礎力不足です。

ぱっと問題を見て何をしなければならないか頭に浮かびましたか?具体的な計算うんぬんより、まずは、どんな会計処理をすべきなのか?また、そのためにはどんな情報が必要なのかが頭に浮かぶようにしましょう。

本問は、本当は返金負債にすべきところを売上にしちゃっているから、振り替えないとまずいな、ということと売上を取り消したということは売上原価も取り消さないとまずいな、これは返品資産にすればいいんだなということに気付いたかどうかです。

で、取り消す売上10,000はすぐに判明しますが、返品資産計上額がわかりません。それは原価率にもとづいて算定せよと指示がありますから、ということは原価率を出せばいいのか、ということに気付ければ容易な問題だったことでしょう。

2.受注ソフトウェア開発

こちらも良問です。一見すると難しそうですが、いつもやっている工事会計です。計算量も少なく、何が問われているのかが読み取れれば、短時間で得点しやすい問題でした。

もし、解けなかったのだとすると、主に次の3つの要因が考えられます。

  1. 工事会計の処理は分かっているし解くことも出来るけど、そもそも受注制作のソフトウェアの会計処理が請負工事の会計処理に準ずることを分かっていなかった
  2. 受注制作のソフトウェアの会計処理が請負工事に準ずることは分かっていたけど、そもそも工事会計の会計処理が分かっていなかった
  3. 何も分かっていなかった

罪深いのは1です。せっかく工事会計の処理を理解していても、そもそも受注制作のソフトウェアは工事会計の処理を行うと気付かないのでは、その力を使うまでに至りません。この手の方は、勉強方法を変えないと今後、伸びが止まってしまうかもしれません。

一方で、2は単なる個々の論点の勉強不足です。テキストを当たり前に勉強すればいずれ出来るようになります。

3はこれからがんばりましょう。

3.貸倒引当金

上記の1の返品権付き販売と、2の受注ソフトウェア開発の仕訳に影響を受けてしまうので、それらが完璧にできていれば取れるところですが、そのあたり自信が無いなら捨ててしまっても良いでしょう。

4.有形固定資産

こちらも良問でした。

減価償却費について

通常の営業で使用する有形固定資産の減価償却費は販管費。一方で、投資不動産として収益を獲得する有形固定資産の減価償却費は(それが本業でないなら)営業外費用であることを分かっているか、というのが1つのテーマです。

また、建物(乙)は、当期末に減損の兆候が判明して残存耐用年数を4年に変更しています。もともとの耐用年数が15年ですでに期首までに3年経過していますから、残り12年を5年に変更したわけです。じゃあ、見積もりの変更だから、要償却額を残り5年で…という思考をしてはいけないことを分かっているかどうかも問われています。良問ですね。

無形固定資産計上のソフトウェアの償却や、有形固定資産の減価償却は「期首の時点でどう計画を立てていたか」にもとづいて当期の減価償却を行います。期末になって急に条件を変えたからといって、当期中に発生してしまっている費用を変更したりしないのです。そんなこと自由に出来たら利益操作やり放題です。

本問で耐用年数の見積もりを変更したのは期末です。期首時点では耐用年数15年(期首時点での残存耐用年数は12年)であることを前提に1年間営業活動をしてきたのですから、減価償却費は180,000円÷15年=12,000円です。これを営業外費用に計上します。

なお、似た論点で、ストック・オプションや原価回収基準による収益認識がありますが、こちらは期末時点の最新情報にもとづいてその時点での最新のストック(ストック・オプションなら新株予約権、原価比例法なら累積された収益)の算定が優先されます。ここ、対比して覚えておくといいでしょう。

減損会計について

本問の減損会計は、そもそも「土地と建物」が一体となっており、これが収益を生む最小の資産グループである、ということを分かっているかがポイントの1つでした。ここが分かっていなくて落とした方もいらっしゃったようです。

本問は、保有する土地の上に建物があって、これを収益を生む最小の資産グループとして考えると、毎期(賃料収入?)として29,282千円が入ってきて、4年後には建物を除去し土地だけ残るのでそれを146,410千円で売るつもりだよ、と言っているのです。

これを、土地と建物をばらばらに考えて、土地の簿価が146,410千円で土地の割引前将来CFが146,410だから減損を認識しないと判定されている受講生がいました。減損会計のルールをしっかり理解されていて素晴らしいのですが、そもそも減損って何?収益を生む最小の単位って本問ではどれ?という前提が読み取れていないゆえ間違えてしまっています。そこに気付かせるという点で良問だと思います。

研究開発費について

「機械装置は、もっぱら新規事業の研究開発活動に使用する目的で取得したものである」をどう読み取るかによって別解の余地があるように思えます。

機械装置が特定の研究開発目的に使用され他の目的に使用できない場合は資産計上せずに研究開発費にします。一方で、特定の研究開発目的に使用された後に他の目的に使用できる場合は資産計上したうえで減価償却費を研究開発費に振り替えます。

つまり、本問の機械装置が他の目的に使用できるか否かで会計処理が変わります。ここでのキーワードは「もっぱら」でしょう。辞書でひくと「もっぱら」は「他はさしおいて、ある一つの事に集中するさま。また、ある一つの事を主とするさま」とありますから、前者の資産計上せずに研究開発費として処理するのが適当に思えます。

6/12時点でTACの解答速報のみ研究開発費を22,800とされており後者の処理を行っていますが、他スクールでは32,000と、前者の処理を行っているようです。

5.無形固定資産(ソフトウェア)

こちらも良問でした。作問者の立場では、ソフトウェアって作問しにくいんですよ。単に残存0、定額法で減価償却し直接法で表示するだけですから、どうやっても2級レベルの簡単な問題になりがちなのです。

本問はそこにパズルチックな要素を入れて、それなりに歯ごたえというか手応えのある問題に仕上げてきています。

6.外貨建満期保有目的債券

テキストに載っているとおりの基本問題でした。とはいえ、そもそも外貨建満期保有目的債券は論点が複雑ですから、案外正答率は低いのかもしれません。

上記5のソフトウェアのように論点自体の難易度が低いときは、パズルチックに仕上げて難易度を調整し、この外貨建満期保有目的債券のように論点自体の難易度が高めのときは、基本どおりに出題するという点で、受験生のことおよび検定試験の意義まで考えた良問だと思います。

7.退職給付会計

これはかなり易しい問題でした。計算要素があまりなく、書かれている数値を埋めていくだけで解ける問題でした。落としたら終わってしまうような問題です。

8.法人税等と税効果会計

法人税等はそのまま計上するだけです。

一方で、税効果会計は「一時差異は、貸倒引当金、受注損失引当金、減損損失累計額および退職給付引当金のみから生じるものとする」とあるためこれらの論点がパーフェクトに正解を取れていないと、そもそも解けないわけです。ということで基本的には捨て問題です。他が全て解けていて余裕があったらやりましょう。

9.中間配当に伴う準備金の積立

2級レベルの問題を1つ入れることで、点数を取りやすくしてくれているのかもしれません。落としたらかなり痛手です。

会計学

全体の印象

  • 印象:良問だが難易度高すぎ。ただし今後の学習用教材として使える良問。
  • 難易度:第1問は易しめ、第2問は超難問
  • ボリューム:普通もしくは第2問を全部やろうとするなら無理なほど膨大
  • 目標点数:15点、最低ライン10点くらいかな。
  • 第1問でどれだけノーミスで取れたかが勝負を決めそうです。第2問の在外子会社の連結会計および包括利益は、ほとんどの受験生が出来ない(会計士受験生なら1級専門生よりも取れるはずですが、それでもこの時間内では大してとれない)問題ですから、意外と差がつかないと思います。
  • 傾斜配点:大きく傾斜配点が行われると思います。後に問題ごとの難易度ランクを示しますが、A、Bランクに厚めの配点が来ることでしょう。C、Dランクにはほとんど配点が来ないと思われます。

個々の論点ごとの印象

第1問 理論問題

ちょうど良い難易度でした。多少簡単だったかもしれませんが。

(1)から(4)は、ノーミスでの正解が期待されます。

懸念されるのが、(1)で「会計上の見積りの変更」ではなく単に「見積りの変更」と書いてしまったケース、また(3)で期末実地棚卸数量を期末実際棚卸数量や期末実際数量などと書いてしまったケースです。気持ち的には部分点をあげたいところですが、他の受験生との兼ね合いになると思います。

ほとんどの受験生が正確に書けており、ごく一部の受験生が不正確な記述をしているのであれば不正解になると思います。一方、多くの受験生がまあまあ合っているけど不正確という解答なら部分点が来そうです。

(5)は、繰延資産についての結構細かい部分が問われています。プロ簿記ではたまたまこの箇所についてインプット講義や初級確認テストで解説していたので他スクールに比較すれば正答率は高そうですが、一般的にはかなり細かい内容なので間違えても仕方がない箇所だと思います。

さて、配点ですが、通常、会計学における理論問題は5点配点で、残り計算問題が2問出題されてそれぞれ10点配点なのですが、今回は理論1問と計算1問であり、傾斜配点も考えるとこの第1問に10点の配点(各2点×5)がされるのではないかと思います。

第2問 連結会計(在外子会社・包括利益)

難問ですが、良問だと思います。

本問は、在外子会社や包括利益という難易度高めの論点に目が行きそうですが、私が注目しているのはそこではなくて、連結会計はそもそも仕訳を暗記して機械的に集計するような論点ではなく、本質的に企業や事業が1つの報告単位に統合されるということは何を意味しているのかその理解が大事であるという点を明確にした点で良問だったと思います。

プロ簿記では、連結会計を仕訳ベースで教えていません。

連結会計は企業結合会計の延長線上にあります。複数の企業や事業が1つの報告単位になるとはどういうことなのか、どのような財務諸表になるべきなのか?の理解が重要であって、連結修正仕訳自体を暗記してもあまり意味はありません。

与えられた条件から、もしこれらの企業が合併したら、このような財務諸表が出来るはずだよな、という観点から各項目の金額をいきなり算定することは可能であり、試験ではそれを答えればいいのです。わざわざ個別FSベースに連結修正仕訳を適用して算定する必要もありません。

本問を解くにあたって、私は一切の仕訳を書きませんでした。そのうえでパーフェクトの解答を導き出せています。今後ともこのような出題が増加すると予想します。

問1 (1)当期純利益 Cランク

仕訳などおこなわなくても連結財務諸表の当期純利益をダイレクトに算定する力があるかどうかが問われています。

P社、S1社、S2社の個別上の当期純利益の単純合算をベースとして、連結を行ったことによって損益に影響する処理があるのであれば、その調整を行います。本問では、成果連結も子会社による剰余金の配当もないため、のれんの償却のみ考慮すればOKです。

P社318,000+S1社8,000+S2社36,900-S1社のれん償却4,000-S2社のれん償却2,460=69,440

問1 (2)非支配株主に帰属する当期純利益 Aランク

上記(1)当期純利益よりも平易です。S1社とS2社それぞれの個別上の利益から非株に配分した額です。

S1社8,000×40%+S2社36,900×20%=10,580

問1 (3)その他有価証券評価差額金 Bランク

連結BSでの残高が問われています。この場合、連結BSですから親の持ち分だけが対象です。(連結包括利益計算書なら親と非株の合計ですが、BSですから親の分だけです)

P社1,512+S1社770×60%=1,974

問1 (4)のれん償却額 Bランク

S2社ののれん償却額の換算に使うレートが問題です。なお、本問は(1)当期純利益の一部分だけが問われています。この(4)が出来なかった方は当然に(1)当期純利益も出来ないはずです。

S1社4,000+S2社20ドル×AR@123=6,460

問1 (5)親会社株主に係る包括利益 DもしくはEランク

そもそも「親会社株主に係る包括利益」がどの部分の利益なのかを十分に理解している受験生は半分くらいでしょう。(実際には半分もいないかも)

まず、当期純利益のうち、非支配株主に帰属する当期純利益を控除し、親会社株主に帰属する当期純利益を求めます。これは、(1)の69,440から(2)の10,580を控除すれば58,860と算定できます。

問題は、その他の包括利益です。何がありますか?

まず、P社保有のその他有価証券からその他有価証券評価差額金が生じます。次にS1社が保有しているその他有価証券からもその他有価証券評価差額金が生じます。さらに、為替換算調整勘定が生じます。

この為替換算調整勘定は、S2社のBSを換算したことによっても生じますし、S2社の連結によってのれんが生じますからそこからも生じます。

そして、S2社のBSを換算したことによる為替換算調整勘定は親の分と非株の分に按分が必要ですが、のれんから生じた為替換算調整勘定は按分が必要ありません。すべて親会社の分です。

まずは、以上の仕組みというか何をどう集計すれば答えが出るのかについて、実際に計算作業を始める前に捉えていなければなりません。ここまでの話が難しいと感じたのであれば、本問に手を付けるレベルに達していません。時期尚早です。

さて、こういうことをやればいいんだなと理解したとしても実際に計算するとなると相当な手間暇が掛かることが想定されます。

その他有価証券評価差額金は、P社は1,512です。これはまあすぐ出せるでしょう。(ただし税効果を忘れるなどケアレスミスしやすい要素もあります)

S1社のその他有価証券評価差額金は770ですが、親会社に係る分はその60%ですから462です。

次に為替換算調整勘定を算定します。S2社の換算によって生じる為替換算調整勘定は17,100です。資産3,000ドルはCRで換算し、資本金1,500ドルと支配獲得時の利益剰余金1200ドルはHR120で換算し、増加した利益剰余金300ドルはAR123で換算し、貸借差額を取れば17,100が算定できます。親会社分はこのうちの60%です。

これとは別にS2社のれんから生じる為替換算調整勘定も算定します。

期首のれん200ドルは@120で換算し、期中のれん償却額20ドルはAR@123で換算し、その結果である21,540円と、期末のれん180ドルを@126円で換算した22,680円との差額から1,140円を算定します。

この1,140円は全額親会社分です。

以上を集計します。

  • 親会社株主に帰属する当期純利益:58,860
  • その他有価証券評価差額金(P社):1,512
  • その他有価証券評価差額金(S1社のうちPの分):770×0.6=462
  • 為替換算調整勘定(S2社の換算より):17,100×0.8=13,680
  • 為替換算調整勘定(のれんより):1,140
  • 合計:75,654

多分正答率は10%を切っていると思いますし、こんな問題はそもそも手を付けるべきではありません。ただ、考え方は押さえておくべきです。もし、たっぷり時間があるなら良問です。

問2 (1)P社個別の当期純利益 Aランク

一転してとても簡単です。ここで落とすと第2問は取れるところがありません。

問2 (2)S2社個別の当期純利益 Aランク

これも簡単です。当期純利益450ドルをAR@128で換算するだけです。

問2 (3)連結C/I・その他有価証券評価差額金 Cランク

まずその他有価証券評価差額金とはいえ、連結包括利益計算書ですから親の分と非株の分の合計が問われていることに注目することが大切です。また、P社はその他有価証券評価差額金を売却しています。これにより組替調整が生じていますからその他有価証券評価差額金が△1,512になっていることを理解出来ているかどうかも大切です。ここまでで「はて?どういう意味」というレベルであるなら、まだこの問題を解くには時期尚早です。

P社△1,512+S1社(1,190-770)=△1,092

問2 (4)連結C/I・為替換算調整勘定 Dランク

これは見た瞬間に切る判断をした方がいいでしょう。為替換算調整勘定は、問1でも登場しましたがS2社のBSを換算したことによっても生じますし、S2社の連結によってのれんが生じますからそこからも生じます。この両方の集計が必要です。

また、問1は初年度でしたからフロー(1年間の金額)とストック(1年度までの累計)が一致しており計算も容易ですが、問2は2年度が問われているためフローとストックが一致しません。問われているのはフローであることを意識していないとミスしやすいです。

以上よりかなり手間がかかるため時間を消費し、かつミスもしやすく、また周囲の受験生も解けないでしょうから配点も見込めない問題です。捨てる判断がベストでしょう。

とはいえ一応、解き方を示しておきます。

S2社換算による為替換算調整勘定

資産

  • 3,350ドル×CR@129=432,150

純資産

  • 資本金:1,500ドル×HR@120=180,000
  • 利益剰余金:1,200ドル×HR@120=144,000
  • 利益剰余金の変動額
    1年度の当期純利益:300ドル×AR@123=36,900
    2年度の当期純利益:450ドル×AR@128=57,600
    2年度の配当金:△100ドル×HR@127=△12,700
  • 合計:405,800

為替換算調整勘定(ストック):432,150-405,800=26,350

為替換算調整勘定(フロー):2年度26,350-1年度17,100=9,250

のれんによる為替換算調整勘定

期首のれん:180ドル×CR@126=22,680
期中のれん償却額:20ドル×AR@128=2,560
期末のれん:160ドル×CR@129=20,640
為替換算調整勘定(フロー):20,640-(22,680-2,560)=520

為替換算調整勘定

9,250+520=9,770

問2 (5)S1社の非支配株主持分の変動額 Aランク

一転してこれは簡単。タイムテーブルを書いているでしょうから2年度の期首期末の差額を取るだけです。

期末182,876-期首161,508=21,368

問2 (6)S2社の非支配株主持分の変動額 Aランク

これも簡単。換算が生じるため(5)よりは多少難しいものの解き方は同じ。

期末3,350ドル×@129×28%-期首3,000ドル×@126×20%=45,402

問2 (7)S2社ののれん期末残高 Aランク

これも簡単。タイムテーブルからのれん期末残高は160ドルと判明しており、CRを掛けるだけ。

160ドル×@129=20,640

問2 (8)一部売却に伴う資本剰余金当期変動額 Dランク

これは1級レベルでは無理。1級のテキストだけでは誰もやっていないはず。公認会計士ならやっているけど、結構忘れていたり不得意にしている人の多い論点。

単なる子会社株式の一部売却なら簡単ですが、子会社の純資産にその他の包括利益(その他有価証券評価差額金や為替換算調整勘定など)がある場合は、取得後増加分のうち一部売却した分に対応するその他の包括利益は実現したものとみなさなければならないのです。1級だけを勉強しているレベルでは、この事自体を知らない人も多いでしょうし知っていたとしてもそれはその他有価証券評価差額金のことであって為替換算調整勘定にも適用されるということを知らない人も多いでしょう。

さらに本問では、法人税等も考慮しなければならず、従来の1級においては子会社株式の一部売却時の法人税等への振替処理は行われていなかったためここでも面食らった方が多いと思います。

つまり、会計士受験生で短答に受かっているくらいの方じゃないと無理ってことです。(いや、短答に受かっている方でも出来ない人も多いと思います)

ということでさっさと捨てましょう。

一応、一部売却の連結修正仕訳を示しておきます。

子株 28,320 非株 34,572
為替換算調整勘定 2,108    
資本剰余金 511    
法人税等 219    
売却益 3,414    

 

よって、511が解答です。

問2 (9)連結損益計算書の当期純利益 Dランク

問1の(1)と同様です。P社、S1社、S2社の個別上の利益を合算したうえで、連結修正仕訳において利益の変動をもたらす分を調整します。

問1ではのれんの償却額だけでしたが、ここではのれんの償却額に加えて、受取配当金の修正、さらには(8)の一部売却の売却益と法人税等も調整する必要があります。つまり、(8)が出来ていないと解けないので無理でしょう。捨て問題です。

一応、解き方を示しておきます。

  • 個別FS当期純利益:P社67,000+S1社53,000+S2社57,600=177,600
  • のれん償却:S1社のれん償却4,000+S2社のれん償却2,560=6,560
  • 受取配当金の修正:100ドル×@127×持分0.8=10,160
  • 子株の一部売却によるPL:売却益3,414+法人税等219=3,633
  • 当期純利益:177,600-6,560-10,160-3,633=157,247
問2 (10)親会社株主に係る包括利益 Dランク

これも上記(9)が正解していることが前提の問題ですから捨て問題です。

  • 親会社株主に帰属する当期純利益:(9)参照157,247-53,000×0.4-57,600×0.2=124,527
  • その他有価証券評価差額金(P社):(4)参照△1,512
  • その他有価証券評価差額金(S1社のうちPの分):(4)参照(1,190-770)×0.6=252
  • 為替換算調整勘定(S2社の換算より):(4)参照9,250×0.8=7,400
  • 為替換算調整勘定(のれんより):(4)参照520
  • 合計:131,187

 

 

第164回日商簿記1級本試験・レビュー【商会編】” に対して9件のコメントがあります。

  1. コロ より:

    先生
    ご無沙汰しております。流離のコロです。
    腰、くれぐれもご自愛下さい。
    最近、勤務先の社命で「第1種衛生管理者」の試験を受ける羽目になりましたが、「労働生理」を学ぶと、腰は「身体の肝心要」と痛感。。。
    本当にお大事になさって下さい!

    1. pro-boki より:

      こんにちは。ご無沙汰です。お元気そうでうれしいです。

      第1種衛生管理者!
      さすがです。さすらいの勉強人ですね。

      コロさんもあまり飲みすぎませんように。お体をお大事に。

  2. ツナカワアツシ より:

    初コメント失礼します。
    会計学の第二問の(10)の親会社株主に係る包括利益で、一部売却時に減らした為替換算調整勘定2,108を、(10)の回答に含めない理由は何なのでしょう。当期に変動していると思うのですが…

    1. pro-boki より:

      純資産の中での変動ですから、包括利益を構成しません。なお、SSは動きます。

  3. いけあ より:

    初コメント失礼します。
    簿記一級の勉強を2月下旬からはじめて、何度も心が折れかけましたが、なんとか先日の本試験を受けてきました。
    自己採は60後半で合格点には及びませんでしたが、プロ簿記さんの本質講義をたくさん拝見し、勉強させていただきました。11月合格に向けて精進します。これからもお世話になります…

    1. pro-boki より:

      コメントありがとうございます。
      2月下旬からはじめて6月の試験で60後半とは相当なハイペースですね。本質を捉える力が強いのでしょう。
      また、60後半でしたら、失点箇所にもよりますが十分合格の可能性があると思います。会計学と商簿は傾斜配点されると思います。過度な期待は持たないまでも少し期待して合格発表を待ちましょう。

  4. HK より:

    初めまして。会計学第2問の問2(4)について質問です。
    以下のように考えたのですが、誤解のポイントが分かりません。初コメントで大変不躾ですが、ご教授いただけましたら幸いです。よろしくお願い申し上げます。

    ○20X1年度の為替換算調整勘定:18,240
     ・S2社換算分=17,100
     ・のれん分=1,140
    ○20X2年度の為替換算調整勘定:26,870
     ・S2社換算分=26,350
     ・のれん分=520
    ○20X2年度の連結包括利益計算書における為替換算調整勘定
     26,870-18,240=8,630

    上記のとおり8,630と考えたのですが、実際の解答は9,770です。
    なぜ、20X1年度ののれん分から生じる為替換算調整勘定1,140を計算要素に含めなくても良いのでしょうか?

    1. pro-boki より:

      まず、S2社換算分についてはあっています。

      誤っているのは、のれんの為替換算調整勘定について、フロー(1年分の変動額)とストック(累計額)がごっちゃになっている点です。まずは、各年度末におけるストックの額を算定してみます。

      ・20X1年度末におけるのれんの為替換算調整勘定の累計額(ストック)
       $180×@126+$20×@123-$200×120=1,140
      ・20X2年度末におけるのれんの為替換算調整勘定の累計額(ストック)
       $160×@129+$20×@123+$20×@128-$200×120=1,660

      本問は、20X2連結包括利益計算書が問われているので、フローですから、1,660-1,140=520です。

      >なぜ、20X1年度ののれん分から生じる為替換算調整勘定1,140を計算要素に含めなくても良いのでしょうか?

      1,140はストックであるのに対して、520はフローです。すでにフローの金額を出しているのですから、それを適用すればOKです。

  5. HK より:

    まさに先生のご指摘どおり、ストックとフローを混同して考えていました。
    大変勉強になりました。お忙しい中ご返信いただき誠にありがとうございました。

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