第159回日商簿記1級・詳細解説【工業簿記】

全体をとおしての感想

良問だったと思います。

本当に標準原価計算(の基礎のところの考え方)を理解しているか?記帳方法を理解しているか?所与の資料を読み取れるか?という点が問われていました。

ちょっと厳しい言い方になりますが、結構勉強してきたのに本問がまるで難しくて手が出ないという方は、勉強の仕方そのものを見直す必要があるかもしれません。

逆にこの問題を「ちょっと目先を変えているだけで、本質的にはただの標準原価計算じゃないか」と思われた方は、実力があると思います。仮に今回、不合格だったとしても、そのような勉強を続けていれば近々合格されると思います。

本質的な理解をされている方にとってはケアレスミスをしたとしても容易に20点以上取れる問題であり、そうでない方にとっては足切りの危険があるという、多分に出来不出来が両端に分かれる問題だっと思います。

なお私は、およそ35分かかりました。

解き方

以下に私が実際に本試験中に解いた解き方(書いた下書き)を再現します。

この解き方だけが正解というわけではありません。ほかにも色々な解き方が考えられますが、ミスなくスピーディに解くために計算量を少なくすることを意識した解き方ですから、参考になると思います。

では、どうぞ。

Step.1 生産データを作る

以下のような生産データを作成することが出来たかどうかが、本問の最大のポイントです。

 

Step.2 単価の準備をしておく

第1工程

  • M-1:@2,000…(b)
  • 第1作業加工費(直労と製間):@150+@225=@375
  • 第2作業加工費(直労と製間):@50+@75=@125
  • 第1工程完成品単価:@2,000+@375+@125=@2,500…(c)
  • 第1工程月初単価:@2,000+@375=@2,375…(a)
  • 第1工程月末単価:@2,000+@375×進捗度0.5=@2,187.5

第2工程

  • 前工程費(上記第1工程の完成品):@2,000+@375+@125=@2,500
  • M-2:@1,500
  • 第3作業加工費(直労と製間):@450+@600=@1,050
  • 第4作業加工費(直労と製間):@400+@400=@800
  • 第2工程完成品単価:@2,500+@1,500+@1,050+@800=@5,850
  • 第2工程月初単価:@2,500+@1,050×加工進捗度0.5=@3,025…(d)
  • 第2工程月末単価:@2,500+@1,500+@1,050+@800×進捗度0.5=@5,450…(e)
  • 第2工程仕損費単価:終点発生なので完成品単価と同じ@5,850…(f)

Step.3(問1)各工程の金額を算定する

①第1工程の月初有高

標準原価計算なので、原価標準にもとづいて算定する。(a)@2,375×4,000個=9,500千

②第1工程の当月投入の直接材料費

修正パーシャルプランなので、(b)@2,000×実際消費量70,040kg140,080千

③第1工程の完成品

(c)@2,500×71,000個=177,500千

④第2工程の月初有高

(d)@3,025×1,000個=3,025千

⑤第2工程の月末有高

(e)@5,450×1,000個=5,450千

⑥第2工程の異常仕損費

異常仕損の数量:3,000個−完成品68,000×3%=960個
異常仕損費:(f)@5,850×960個=5,616千

⑦第2工程の標準原価差異

どうせ、問2で計算することになるので、そちらを先に計算して集計する。

どう、計算量、めっちゃ少ないでしょ?

Step.4(問2)第2工程の差異分析

①第2工程直接材料費数量差異

前工程費は標準原価で振り替えられているから材料の標準原価差異は、M-2からしか出ない。標準では(生産データより)72,000kgの投入が必要だが実際には72,050kg投入してしまっている。よって50kgの不利差異。金額にするなら、@1,500×△50kg=△75千

②第2工程直接材料費価格差異

修正パーシャルプランなので、仕掛品勘定では価格系の差異は把握しない。よってゼロ。

③第2工程直接労務費時間差異

第3作業の標準@450×71,500個+第4作業の標準@400×71,500個=60,775
第3作業の実際@1,500×21,460時間+第4作業の実際@2,000×14,295時間=60,780
よって、60,775−60,780=△5

④第2工程直接労務費賃率差異

修正パーシャルプランなので、仕掛品勘定では価格系の差異は把握しない。よってゼロ。

⑤⑥⑦第2工程製造間接費の差異分析

標準:(第3)0.3時間×71,500+(第4)0.2時間×71,500=35,750時間
実際:(第3)21,460時間+(第4)14,295時間=35,755時間
基準:問題文より36,000時間

予算許容額:@500×実際35,755+@1,500×基準36,000=71,877,500
実際発生額:71,908,000
⑤予算差異:71,877,500−71,908,000=△30,500(△30.5千)

⑥能率差異:(標準35,750−実際35,755)×標準配賦率@2,000=△10,000(△10千)

⑦操業度差異:(実際35,755−基準36,000)×標準固定費率@1,500=△367,500(△367.5千)

なお、上記①~⑦の差異を全部合計して△488を問1の⑦の解答とする。

Step.5(問3)理論問題

① 修正パーシャルプランとパーシャルプランを比較するなら、前者のほうが責任会計の面から優れているが、修正パーシャルとシングルプランとの比較では、どちらが優れているとは言えない。というか、各原価要素の勘定において、価格面、数量面の両方から早期に差異を記帳するシングルプランは責任会計の面では優れている。よって、×。

なお、そもそもシングルプランは例えば材料なら出庫時に出庫すべき量を把握しなければならないため総合原価計算では採用しづらい。(個別原価計算なら製造指図書があるので、どれだけ出庫すればいいかわかるので、シングルプランは適している)

② 文章のとおり。あっている。よって○

③ これも文章のとおり。あっている。よって○

④ これは、正常仕損費の原価標準への組み入れにおける2つの方法(いわゆる第1法と第2法)についての問題。問題文に書かれている「標準消費量に仕損分を含める方法」は第1法と呼ばれ、これは、仕掛品における仕損費の負担義務を考慮しないため不正確でありその点では望ましくない方法である。ただし、簡便性の面では、第2法(本問の採用している方法)よりも優れているので、厳密にいうと「当社が計算の経済性(簡便性)よりも正確性を重視するなら」という条件付きで「第1法は望ましくない」といえる。よって×