簿記講師が各スクールの解答速報会を切る

日商簿記1級144回・各スクールの解説動画

第144回日商簿記検定試験、受験おつかれさまでした。
実は私、前回までは某社で解答速報の作成をしていたため他社の解説動画などを見る機会(見る余裕)がありませんでした。今回、自由の身となったことで、さまざまなスクールの解答速報を見ることが出来ました。

そこで、講師目線で見た各スクールの解説動画の解説をしたいと思います。これからスクールを選ばれる方の参考になればと思います。ただ一番いいのはご自身の目で確かめることです。リンクが貼ってありますのでご確認いただき、最後はご自身の責任で選ばれるようお願いします。

なお、解説動画はほとんど全て見ていますが、商会の論点解説は一部飛ばしています。工原の論点解説は全て見ました。そのうえでの解説であることをご了承ください。

それではどうぞ。

TAC

模範解答、解説動画

解説動画を見ての感想

商会:丹羽敬紀 講師、工原:鈴木隆文 講師
全体で60分くらい(商会35分、工原25分)。両先生ともに比較的淡々と解説をされる感じでした。ただ決して分かりにくいわけではなく、むしろ無駄が無くスムーズな進行に、個人的には好感を持ちました。

商会の先生は、語り口はやさしい感じです。あまり勢いはありません。おだやかな感じ。最初に以下のような解答戦略の話がありました。

  • 商簿はボリュームが多く、全問解答は難しい。
  • 会計学は35分くらいで解いてほしい。残った時間を商簿にあてる。
  • 商簿の商品売買は後回しにすべき。4は独立処理だったので出来たはず。5以降も多少難しい箇所があるもののこなせるはず。
  • 個人的にはあまりいい問題だとは思えない。推定箇所が多すぎて簿記ではない。多少の推定箇所は応用力を試す意味で仕方ないが、ここまで来るといたずらに複雑で問題のための問題という感じ。こんなことに惑わされずに、解けたかどうかがポイント。

あとは、個別論点について淡々と解説される感じでした。

工原の先生も、語り口はおだやかで静かな感じです。商会と同様、最初に解答戦略の話があり、あとは淡々と解説をこなされる感じです。解答戦略は明確です。「工簿第2問・問3の正誤問題は出来なくてもいい。ただし他は全て取りたい。それで20点は確保できる」という見解です。同意です。

解説は、板書を用いて、すべての論点について触れていました。多少、解説が早すぎたり簡易すぎるかな、という感じもありますが、言い方を変えれば、無駄がなく、スムーズな進行とも言えます。

それから、設備投資のCF算定で、独自の図を使い解説されていました。なるほど、慣れれば便利かもしれないと思いました。まあ、私の解法の方が優れているとは思いますが(笑)。いずれにしてもミスしにくくスピーディな解法を講師が開発して受講生に提供するのは、いいことだと思います。

当然ですが、きちんと全てご自分で解かれて、ご自分の中で咀嚼された上で、解説している感じは伝わってきます。

大原

模範解答、解説動画

解説動画を見ての感想

藤重泰樹 講師(商会・工原ともに)
全体で44分くらい。

ハキハキしているのですが、どうもなんというか、無理してハキハキじゃべろうとしている感じがして、聞いているのが辛い感じです。

44分しかないのですが、冒頭、いきなり予想配点の読み上げがしばらく続きます。8分続きました。聞いていて暇です。見れば分かることを淡々と8分読み上げるという感じで、どうにも・・・。

さあ、解説が始まりました。ただ、なんというか話し方が気になって(癇に障る?)内容があまり頭に入ってきません。(あくまでも個人的な感想です)ああ、そういえば中学とか高校のとき好きではなかった先生の話し方に似ているなと思い出しました。私個人のトラウマのせいかもしれません。とにかく学校の先生のようでした。

解説内容は、まあ普通と言えば普通です。時間も限られているので、簡単な箇所は飛ばして、ポイントになる箇所のみ解説していきます。

ただ、時間が無いので・・・という割には、「では、まずは問題文を読みます」という感じで見れば分かる内容を数分掛けてゆっくりと読み上げる、というスタイルがどうにもなじめませんでした。

解説も、教科書通りという感じです。特に講師としての工夫とか分かりやすさを追求したものではありません。ただ、学校の先生なので間違えたことは言わない、という感じはしました。

好き嫌いが分かれると思います。受講を検討されている方は、是非一度、ご自分の目でご覧になることをおすすめします。

LEC

模範解答、解説動画

解説動画を見ての感想

富田講師(商会・工原ともに)
全体で32分くらい。

名物講師の富田講師。べらんめえ口調だよと、噂には聞いていたのですが、しっかり講義を聞いたのは初めてです。好き嫌いがはっきり分かれることでしょう。

講義の要旨は次のとおりです。

  • 工原は、勝負になるくらいの点数は取れたはず。一般に考えれば、多分、配点調整はない。落ち着いて取り組めば比較的点数は取れたと思う。
  • 会計学は通常30分を目安にするようにと話しているが、今回は40分以上かけても良かったかもしれない。一方で商簿は、商品売買関連がかなり煩雑なので、後に回したほうがいい。まともにやると商品売買だけで30分以上掛かってしまう。解答戦略として、5番以降に掛けたほうがいい。
  • 償却率計算で端数が出るが、端数処理の指示がない。(金額における端数処理の指示はあるが、償却率については記載がない)問題の不備と言える。
  • 商簿は、多分、配点調整が入ると思われる。となると5番以降をどれだけ落とさなかったかに掛かっている。会計学は第1問の出題形式に戸惑う人も多かったかもしれない。時間を掛けてでもいいから、全体で7〜8割はほしい。

つまり、具体的な解法や解説が一切ないのです。どこが難しかったか、簡単だったか、配点調整があるか否かといった感想が中心の講義でした。

また、問題そのものに対するクレームが多く、人によっては違和感を覚えるかもしれません。個人的には、そんなこと言っても始まらないのだから、もっと現実的な対応策を話した方がいいのに、と思う一方、こういうガス抜きは受験生受けがいいのかなぁとも思ったりもしました。

全般的に繰り返しの話が多く10分で話せる内容を30分掛けている感じもあります。ただ、それは、ご自分でしっかり解いて、ご自分の感情の高まりを言葉にされているゆえに、熱くなって繰り返しになったのかなとも思います。

話口調にたいへん特徴があり、こういった話し方を好まれる方は、よろしいのではないでしょうか。ただ、実際の解法や解説が無かったので、講義解説の実力のほどは全く分かりませんでした。

クレアール

模範解答、解説動画

解説動画を見ての感想

山田講師(商会・工原ともに)
全体で55分くらい。

話口調がやわらかくて、とても好印象です。話し方だけで好きになってしまいそう。ご自分の言葉で分かりやすく話されていると思われます。

講義の要旨は次のような感じでした。なお、商会の解説を見ていません(飛ばしました)。工原については全て見させて頂いた上で感想を書いています。

  • 全体をとおして
    「商簿ボリューム多い。商品関連でパニックになった人も多いかもしれない。会計学はまあ普通じゃないか。評価換算差額での失点はありえるかもしれない。工簿は、理論が多少難しい。計算は簡単。合格点は取れるはず。原計は、難易度は高くはない。満点はなかなか厳しいが合格点は取れるはず。」というお話でした。
  • 工簿について
    全般的に解説はライトな感じです。理論はしっかり説明されていました。差異分析は簡単なので自分でやっておいてくださいという感じでした。
  • 原計・設備投資について
    こちらも全般的に解説はライトです。CFをどうやって求めるかの解説はありましたが、その先は「CFが判明したので、あとは、それを使って内部利益率とか正味現在価値を計算するだけです。丁寧にやって頂くだけですね」とのことでした。個人的には「いやいや、その内部利益率の求め方こそが解説のしどころでしょ。特に問6は難しいよ。」と思ったのでちょっと不満でした。
    しかし、その後、問5まで取ればいいですよ、問6は捨てましょう、という解答方針を話されていたので、それなら納得だと思いました。
  • 原計・差額原価収益分析について
    こちらは丁寧に説明されていました。事業部の話も感情を込めて話されていたので、分かりやすい解説でした。

とにかく話し方に好感が持てます。上手な講師だと思います。ただ、内容面での詳しい解説は無かったので、講師としての力量がどれほどのものか、正確には分かりませんでした。

ネットスクール

模範解答、解説動画

  • 模範解答集:小冊子の無料送付サービスは無いようです。
  • 解答速報PDF
  • 解説動画

解説動画を見ての感想

商会:中村 講師、工原:山田 講師

全体で1時間42分もあり長いです。他のスクールの2倍から3倍はあります。

両講師とも、話口調は聞き取りやすく、適度にやわらかくて、よろしいのではないかと思います。ただ、全体的に世間話が多く、馴れ合いの雰囲気があります(そのために時間が長いというのもあるかもしれません)。これに馴染めるかどうかで好き嫌いが分かれるかもしれません。

講義の要旨は次のような感じでした。なお、論点解説については、商会の解説を飛ばしましたので、工原についてのみ感想を書かせていただきます。

まず、講師の手書きの下書きが画面に表示されるため、分かりやすくていいと思います。ただし、解説が、下書きの数字を追っていくだけなので、正直、何の解説をしているのかよく分かりません。もう少し、数字の意味や何の計算をしているのかを話して頂ければと思いました。僭越ながら、満点を取っている自分が聞いても、分からなかったので、一般の受験生もよく分からなかったのではと思います。

それから、下書きに「16,000÷4,038.4=3.961」という式が書かれており、私が解いたときは出てこない数字だったので、何の数字か気になりました。しばらくして、講師いわく「この数字を使って内部利益率を出す。そうすれば全ての問に答えられる」と発言されました。

それで、意味が分かりました。ああ、勘違いしているなと。こちらの講師、ご自身で解いていないのでしょう。解いていれば「あ、この解き方じゃ解けない」ということに気付くはずですから。内部利益率の本質的な意味も理解されていないと思われます。どなたかが作った解答を使っているのでしょうけど、それにしても事前に確認すべきと思います。間違えた解説を公言するのはまずいです。

先に原価計算の解説があり、その後、工業簿記の解説になりました。

第1問の理論問題の解説はありませんでした。第2問から解説スタートです。問1と問2をきちんと拾って問3の追加配賦は捨てましょう、という話が冒頭にありました。賛成です。ところが、その拾うべき問1と問2の解説はなく、解説のほとんどは捨てるべき問題の説明でした。何を意図されているのかよく分かりませんでした。

気になったのが、チャットです。ネットスクール社の解説動画は、YouTubeではなく、独自システムで、視聴者がチャットを出来る仕組みになっています。これが盛り上がっており、多くの書き込みがありました。しかし、そのチャット内容は、講義中にも関わらず講義とは一切関係の無い話ばかりで、正直、誰も講義を聞いていないという感じでした。仕方ないのかもしれません。私自身、何を解説しているのか途中からついていけなくなってしまいましたから。

最後に。講師に求められるのは、日々の勉強を通しての実力の維持、それを分かりやすく解説するための工夫、そして一番大切なのは、分からないことは分からないといえる誠実さだと思います。その点から、疑問のある解答速報会でした。

ただ、一見すると、滑舌もよく、話し口調がやさしいので、そういった雰囲気が好きな方は、惹かれる点があるかもしれません。


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簿記講師が各スクールの解答速報会を切る” に対して1件のコメントがあります。

  1. く~まん。 より:

    関係のないチャットをしました、申し訳ありません。

    どちらかというと受講生とやり取りをしたかった、というのが本音です。

    やはりコメントが長いですね、ネットスクールに関しては(笑)

    中村先生の解説は見たくなかったのでしょうか?

    すこし信用をなくしていましたが、惹かれるものはありましたよ。

  2. pro-boki より:

    く〜まん。さんへ

    >関係のないチャットをしました、申し訳ありません。

    いえいえ。すみません。そういうつもりでも無かったのですが。

    >やはりコメントが長いですね、ネットスクールに関しては(笑)

    そうですね。講師が問題を解いていないとか、間違えた解説をするのはなかなか珍しいことでしたので。コメント長くなっちゃいましたね。

    >中村先生の解説は見たくなかったのでしょうか?

    いえいえ。商会の問題を解いていないので、講義を見たところで、良し悪しの判断ができないと思ったからです。

    1. く~まん。 より:

      そうなんですね、それは失礼しました。

  3. きゃろる より:

    こんにちは。
    先生ならではの視点が面白かったです。
    ネットスクール以外は模範解答集をだしているので、説明がざっくりなのかもしれませんね。
    模範解答を全校依頼してみようかな。
    私は極度の心配性でして、個人的には面白かったのですが、
    上記学校から叩かれたり、訴えられたりしないか心配になりました。
    学校からすれば、先生は商売敵ですから・・・。
    心配しすぎですかね?

    1. pro-boki より:

      >上記学校から叩かれたり、訴えられたりしないか心配になりました。
      「この感想は誹謗中傷だ!訴えてやる〜」って感じですかね。アクセス数稼げそうな記事が書けそうです。最近、ちょっとネタに困っているのでありがたいです(笑)

      >学校からすれば、先生は商売敵ですから・・・。
      まあ、きちんとした商売をされているスクールにとっては、こんなブログ何でもないですよ。そうじゃないところはどうか知りませんけど。

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